報道陣が待ち構える中、遺骨を引き取りに訪れた関係者
(12月1日、御霊堂元町で)
永代供養を信じて故人の遺骨を預けていた利用者を不安の底に突き落とし、大きな波紋を呼んだ宗教法人白鳳寺(札幌市東区・太田司代表役員)の経営破綻問題。御霊堂元町に残されていた遺骨は12月中旬から希望する檀家へ引き渡されたが、今なお納骨堂には多くの遺骨が残されたままだ。宗教法人を盾にした“納骨堂ビジネス”はいかにスタートし、頓挫したのか。浮かび上がってきたのは、転売の果てに詐欺事件を起こした宗教法人の“黒歴史”だった──。
(本誌編集長・工藤年泰)
12月14日昼過ぎ、約2カ月の間、利用者が入れなくなっていた御霊堂元町の扉が開いた。雪混じりの寒風が吹きつけ、テレビクルーなど報道陣が待ち受ける中、利用者が遺骨を引き取りに次々中に入っていく──。利用権の放棄を条件にしたこの引き取りは同月27日で終了したが、納骨堂にはまだ残されている遺骨が相当数あると見られる。
「利用者にはさまざまな立場の方がおられるはず。ご遺骨をそのまま御霊堂で管理してほしい、引き取って別の場所に改葬したい、自宅など手元に置いておきたい、さらに無縁のご遺骨もあるかもしれません。市としては、それぞれの立場を尊重しながら今後の対応に当たっていきたい」
こう話すのは、納骨堂などの経営を監督する札幌市保健所生活環境課の担当者だ。だが、「それぞれの立場を尊重」と言っても、御霊堂元町の土地建物を所有する不動産会社が納骨堂の経営を引き継ぐのは、事実上不可能だ。
「条例に基づいて市が納骨堂の経営を許可したのは、あくまで白鳳寺という宗教法人。不動産会社にあらためて許可を出すことにはならないかと」(同担当者)
市はこの年明け以降、遺骨の数の確認や取り扱いについて不動産会社と協議を進める方針だが、いずれにしても遺族たちが白鳳寺に払った利用料の返還は、ほぼ絶望的な状況だ。
白鳳寺の納骨堂事業は、本誌が2008年当時指摘していたように宗教法人を名義上の事業主体に担ぎ出した“霊園ビジネス”だったと言っていい。