〝農と食〟北の大地から 
中標津発・三友盛行さんに訊く「酪農危機」への処方箋(前編)

2023年01月号

(みとも・もりゆき)1945年、東京都生まれ。都立高校を卒業後、酪農実習などをへて、68年に根室管内中標津町俵橋へ開拓入植。「1haに親牛1頭」を基本にした循環型酪農を営み、2017年に新規就農の夫婦に経営を移譲。10年、蘭学者の緒方洪庵が開設した「適塾」と適正規模の酪農にちなんで私塾「酪農適塾」を設立。現在は毎月1回、「土・草・牛」の観察や座学を中心にした学びの場などを主宰する。93年から6年間、中標津町農協組合長。著書『マイペース酪農』(2000年、農文協)ほか

外部資材に依存し“重装備”で目指した生産増で苦境に直面

牛乳・乳製品の需要が低迷し、穀物やエネルギーの高騰、個体販売価格の暴落などが常態化してきた北海道の酪農業界。国の「畜産クラスター事業」などを使って施設や設備に多額の投資をした“重装備型”の農場ほど厳しい状況に直面している。そんな中で、社会や消費生活の変化を直視できず、一過性の現象と捉えがちな業界のままでいいのか──根室管内中標津町で「土・草・牛の循環」を重視した適正規模のマイペース酪農を続け、今は「酪農適塾」を主宰する三友盛行さんの意見を訊いた。

ルポライター 滝川 康治(11月18日収録)

多額の投資が招く悪循環の道
顕在化する依存型酪農の限界


 ──三友さんは「大型酪農が厳しいのは、あらゆるものが重装備型のためだ」と指摘されています。
 三友
 「酪農適塾」で僕は「規模拡大した酪農家が大変になる」と話してきました。ざっと見た感じで、北海道では重装備型の経営が3割、標準型が5割、軽装備型が2割程度だと思います。
 畜産クラスター事業〔註①参照〕は重装備で施設型、放牧酪農は軽装備です。補助金があるがゆえに重装備をする──これは過剰な設備投資になります。一方、軽装備型の酪農はコストが低く、生産量と装備とのバランスが取れており、結果として生産効率が良い。
 国が主導した根釧パイロットファーム〔註②参照〕と新酪農村〔註③参照〕の事業を反省すると、両方とも当時にしては重装備といえます。そこには償還金がのしかかる大変さがあり、「余計に牛乳を搾らなければならない」という方向に走っていく。

註① 畜産クラスター事業=酪農・畜産分野の生産基盤強化や収益力の向上を目的に、農林水産省が2015年度から始めた補助金交付事業。地域関係者で構成する「畜産クラスター協議会」(道内は115組織)で計画を作成し、知事の認定を受け事業を活用する。機械や設備の導入時に50%の国庫補助を受けられ、支払いは7年間の分割払いが基本

註② 根釧パイロットファーム(PF)=世界銀行の融資を受け、1955年以降に根室管内別海町内で実施した集約的な実験酪農場。64年までに361戸が入植したが、経営難に陥って離農者が相次ぎ、定着率は50%程度にすぎなかった

註③ 新酪農村=根釧PFの失敗を踏まえ、1973年に別海町と隣接する根室市や中標津町、標津町、浜中町を含む地域で建設に着手した大型農場の総称。総事業費953億円を投じ、83年までに222戸(うち新規就農94戸)の入植が完了した

「畜産クラスター事業」が始まり飼養頭数が急伸した
(出典:北海道農政部「北海道の酪農・畜産をめぐる情勢」)

酪農政策の矛盾を「早期淘汰」の交付金で対応へ
(22年11月9日付け『日本農業新聞』)

「酪農適塾」を主宰するかたわら、放牧酪農家のアドバイス役も(22年9月、中川町内で)

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道内では430戸(21年3月現在)に導入された搾乳ロボット

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