これからの北海道観光を探る【美瑛町編】
入込み復調の美瑛町が抱える観光客のモラル・マナー問題

2023年01月号

大勢で農地に無断侵入するバスツアー客(全ての写真提供は、丘のまちびえいDMO)

「知らない」では済まない観光公害

“丘のまち”の代名詞が示すように、この地域ならではの丘陵が生み出すさまざまな美しい景観が、長年にわたり訪れる人々を魅了させている美瑛町。今年度の春ごろから新型コロナ対策に伴う行動規制が緩和の方向へ舵を切られ、このまちにも徐々に観光の賑わいが戻り始めているという。コロナ禍からの客足回復は喜ばしいことに感じたが、一方で積年の課題である「観光客のモラル、マナー問題」の増加も危惧しているようだ。「観光立国」と声高に叫ばれる中、観光客の増加が地域にもたらす弊害があることも、美瑛町のケースから考えたい。

(髙橋貴充)

農業あっての観光資源


“パッチワークの丘”の呼び名で広く知れ渡っている景観に、「セブンスターの木」「ケンとメリーの木」などの景勝スポット──。
 今やお馴染みとなった美瑛町の景観という観光資源が根付くきっかけになったのは、およそ40年前。このまちの丘と農作業が織り成す風景に魅入られた写真家・前田真三氏(1922~1998)のさまざまな作品が世に出始めてからだ。1987年には同町に前田氏自身のギャラリー、拓真館が開設された。なお2022年は前田氏生誕100年の節目を迎えた年だった。
 まちの産業における観光の位置付けについて、町商工観光交流課の平田敦史観光振興係長は、「観光と農業は、まちの産業の両輪」と話していたが、観光が今日の基幹産業となったのは、このまちの営農が生み出す他にはない美しい景色を、前田氏が写真を通じて広く伝えたことによるところが大きい。つまり美瑛の観光資源は、ここならでは農業由来といっても過言ではない。
 そんな同町の観光客入込状況だが、ピークを迎えたのはコロナ禍に見舞われる直前の2019年度で、年間約240万人。それがコロナ禍で年間約100万人と半減以上まで落ち込んだが、2022年度は「上半期で前年の年間総数にあたる約100万人となりました」と前出の平田係長が回復基調にあることを話した。

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