道警不祥事から考える〈57〉
副署長 相継ぎ自殺か

2022年08月号

報道対応を担う警察署副署長の不在は、その後の人事ですでに解消されている
(旭川市の北海道警察旭川方面本部)

道警・旭川方面で異例の事態 ストレス、パワハラ疑う声も

5月末から6月にかけ、北海道警察・旭川方面の2警察署で副署長の急逝が相継いだ。ともに50歳代後半の男性で、階級は警視。1人は暴力団捜査など刑事部門で実績を積み、もう1人は警備・公安畑を長く歩いた。前者にかかわる“事件”は報道大手の取材で周知の事実となったが、後者の話題はほぼ表沙汰になっていない。時期の重なりは偶然だった可能性が高いものの、同じ管内で同じ役職の警察官の訃報が続くのは異例の事態といえるだろう。2人の副署長に、何があったのか

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆 著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)53歳



窃盗事件、道警は未発表


 大手紙の一報は、2つの事実を伝えている。現職警察官が窃盗の罪に問われたことと、当事者が自ら命を絶ったことだ。
《万引きをしたとして、道警が深川署副署長の男性警視から窃盗の疑いで任意で事情を聞いていたことが28日、捜査関係者への取材でわかった。副署長はその後、死亡した。自殺とみられるという》
    (讀賣新聞 6月29日付朝刊)
 これに3つめの事実を加えるとすれば――、
《事件については公表していなかった》
    (北海道新聞 同日付朝刊)
 この一文の主語は、道警。一連の事件は報道発表されず、記事化されて初めて明るみに出たわけだ。
 取材によれば、道警旭川方面深川署の副署長は6月18日、旭川市内のスーパーでチョコレートなどの菓子数点を万引きしたという。
 犯行当日は土曜日で、勤務時間外。その前日に言葉を交わしたという地元の知人は「とくに変わった様子はなかった」と振り返る。窃盗の被害額は数百円で、当初は微罪処分が検討されたが、任意捜査の過程で道警は余罪を追及し始めた。事情を知る人物は「かなり厳しく調べられたようだ」と話す。

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