医療現場で散った命⑮
「どうか生き続けて」

2022年07月号

労働災害を否定した当局の決定により、過労死遺族は長い闘いを強いられる結果に
(札幌市厚別区の札幌東労働基準監督署)

遺族の訴え、現場に一石 看護師過労死訴訟が終結

10年間に及んだ闘いが、ようやく1つの節目を迎えた。就職まもない新人看護師の命を奪った、医療現場の過重労働。その被害を労働当局が認めるまでには6年の時間を要し、さらに現場の医療機関が自らの責任を受け入れるまでに3年あまりが費やされた。司法が和解を進める中、当事者がこだわったのは「再発防止」の誓い。声を上げ続けた遺族は、すべての医療関係者に呼びかける。「苦しく、辛いことがあっても、どうか生き続けて」――。
取材・文=小笠原 淳






再発防止条項「譲れない」


 5月24日午後、札幌市内。「勝利和解」と大書された横断幕が、その報告を見守っていた。
「裁判で『もう亡くなって10年ですね』と言われ、ああ、そんなに経っちゃったんだなあと…。綾が亡くなっていた時の光景は、昨日のことのように思い出します」
 そう声を詰まらせるのは、2012年12月に23歳で世を去った新人看護師・杉本綾さんの母親(59)。綾さんの職場だった医療機関に謝罪や賠償を求めていた裁判がこの日、和解という形で幕を閉じた。
「人の命を預かる医療従事者の方々は、決して自分の心と身体を壊してまで仕事を続けてはいけない、そう思っています。『どうか自分の命を大事にして、こういうことがもう二度と起こらないように』と声を上げてきましたが、それでも綾の後にも命を絶ってしまった人たちが…」
 長く続いた裁判が医療現場を変えるきっかけになればと、母親は願う。訴訟代理人を務めた島田度弁護士(札幌弁護士会)も同じ思いの下、この日迎えた結論を「明日に繋がる和解」と評価した。

当初は長時間労働などを認めようとしなかった職場が、ここに来てようやく「再発防止」を約束した
(札幌市豊平区のKKR 札幌医療センター)

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法廷闘争には一区切りがついたが、原告や支援者らは「ここからがスタート」と、すべての医療現場の労働環境改善を訴える
(5月24日午後、札幌市内)

当初は長時間労働などを認めようとしなかった職場が、ここに来てようやく「再発防止」を約束した
(札幌市豊平区のKKR 札幌医療センター)

法廷闘争には一区切りがついたが、原告や支援者らは「ここからがスタート」と、すべての医療現場の労働環境改善を訴える
(5月24日午後、札幌市内)

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