“ 百年記念塔の解体”は平成23年から既定路線だった!?
現状維持コストに入れられた経費内訳なき約20億円の正体

2022年03月号

道が存続の意見に耳を傾けない北海道百年記念塔

和田衆議らも計画の実態を問題視

平成31年2月に道が解体の方針を決めた、野幌森林公園(札幌市厚別区)の北海道百年記念塔。その後、地域住民などから解体計画の見直しを求めるさまざまな動きが起こっているが、道としては「解体することへの理解を求める」という選択肢以外ないようだ(2022年1月号既報)。そんな中、「百年記念塔解体についてお話したいことがある」との連絡が2月某日編集部に寄せられた。相手は、この地域を地盤とする和田義明衆議(自民党・道5区選出)の秘書。衆議らが研究者の調査で浮き彫りになった、解体計画の杜撰な内容などを伝えたいという。 (髙橋貴充)



次々出てくるいい加減な積算


 連絡を受けての札幌市内某所での取材。その場には和田衆議のほか、同施設解体に係る問題提起のレポート「北海道百年記念塔の真実」をまとめた海堂拓己氏の姿もあった。
 この海堂氏は北海道の開拓の歴史について情報発信しているWEBサイト「北海道開拓倶楽部」の運営者で、「北海道開拓の象徴的施設である百年記念塔を何とか守りたい、という活動のひとつとして今回の調査を行ないました。『北海道百年記念塔の真実』は道の情報公開条例で入手した4つの調査報告書(※平成23年、平成25年度、平成29年度、令和3年度)を読み込んで分析した、我々なりに思ったところをまとめたものです」と話している。
 海堂氏と和田氏が、まず道の平成29年度調査報告書について解説する。
「ここでは残す場合で、建物への立ち入りを可能とする原状復帰管理計画と立ち入り不可でモニュメントとして残す現状維持管理計画。解体では基礎を含む全ての除去と基礎を1mまで除去して埋め戻す、の4つの計画が出されています。我々としては、設計者の井口健氏がこの塔について『外から観るモニュメント』と考えておられたので、現状維持管理計画を中心に検証しました」(海堂氏)
 海堂氏の詳しい説明に移る前に、令和3年11月に明らかになった同施設の解体あるいは維持に係る実施設計の概算費用を記しておきたい。
 まず解体費は約7億2千万円。だがこれから海堂氏らが解説する、平成29年度調査報告書では約4億1千万円(※基礎含む全除去)だった。そして原状復帰は約30億7千万円(※平成29年度時点は約28億6千万円)。現状維持の場合は約28億4千万円(※平成29年度時点は約26億5千万円)との発表だ。
 なお道としては解体以外の選択肢はないため、原状復帰・現状維持のいずれの試算額も「あくまで参考として出したもの」としている。加えて原状復帰と現状維持は、今後50年間に必要な費用としての試算だ。
 平成29年度調査報告書における現状維持管理計画の費用・約26億5千万円について海堂氏は、「早期に措置すべき事項」の約1億1千400万円。毎年行なう「経常措置」約1千万円。「外部大規模修繕」の4億2千万円。「内部大規模修繕」2億5千万円の大きく4つの費用分類となっているという。なお「外部大規模修繕」と「内部大規模修繕」は、50年間で各3回ずつ実施としている。
「その中でまず『経常措置』についてですが」と切り出した海堂氏。
「ここに『外部ルーバー下端見切板の腐食改修』という項目があります。外部ルーバーは塔の43カ所に設置しているもので、同報告書では毎年9カ所ずつ更新し5年間で全部を新しくする、とある。ですが6年後から、また5年かけて外部ルーバーを更新するのだと。このサイクルを50年間繰り返すとあります」

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「北海道百年記念塔の真実」を手にする和田衆議(左)と海堂氏

「大規模修繕」の経費内訳がないことを指摘する「北海道百年記念塔の真実」の7頁

16頁では平成29年度報告書の解体計画が、前の報告書のコピーだったと指摘している

「北海道百年記念塔の真実」を手にする和田衆議(左)と海堂氏

何度も更新する必要があるという外部ルーバー

「大規模修繕」の経費内訳がないことを指摘する「北海道百年記念塔の真実」の7頁

16頁では平成29年度報告書の解体計画が、前の報告書のコピーだったと指摘している

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