“核のゴミ”文献調査に揺れる神恵内村長選の行方
脱原発運動家の出馬で “36年ぶり”の選挙戦へ

2022年03月号

村では1986年以降、選挙戦が行なわれてこなかった(写真は神恵内村役場)

問われる高橋村政「無風の20年」

高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定に向けた文献調査が行なわれている神恵内村。ここで任期満了に伴い実施される村長選(2月22日告示、同27日投開票)に出馬する意向を示していた新人の瀬尾英幸氏(79)が1月16日、岩内町で記者会見を開き無所属で立候補することを正式表明した。現職の高橋昌幸氏(71)はすでに6選に向け出馬を明らかにしており、1986年以来、実に36年ぶりの選挙戦となる見通しだ。泊村在住で脱原発運動を続ける瀬尾氏は「あえて選挙では核ゴミ問題を争点にしない」とし、地域活性化策を中心に訴えていく考え。一方の高橋氏は「初めての選挙戦で試行錯誤だが、当選できるよう全力をあげたい」と本誌の取材に応じた。核のゴミ問題で揺れる神恵内のトップを選ぶ村長選の動向を追った。(武智敦子)

地域活性化を争点に


 瀬尾氏は小樽市出身。東京の大学を卒業後、小樽に戻り食品卸会社の社長や労働組合の委員長を務めてきた。2015年9月に石狩市から泊村に移り住み、脱原発を目指す住民運動を続けている。
 今年1月1日、本誌の取材ではじめて出馬することを明らかにした瀬尾氏は、村長選が無風になることを阻止するため村内に文献調査に反対する立候補者を探したが不発だったと明かし、自身の出馬については「玉砕しても反対の声を上げるしかない」と決意を語っていた。
 岩内地方文化センターで行なわれた1月16日の記者会見では、有権者に対して核ゴミの問題点や危険性などを訴えていく考えを示したが、「文献調査は住民を巻き込んだ形で返上しなければ本物ではない」とし、「選挙で争点とすることは不毛。今回勝ってもすぐに賛成派を転向させるのは難しい」との見解を述べた。
 最も訴えたいのは、基幹産業である漁業の振興など地域活性化策だ。
「村の自立を促せば、原発マネーに依存しなくてもすむ。神恵内村を含む4町村は原発がらみの交付金をもらっても人口が減っており、費用対効果はどうなのかと聞きたい」と語気を強め、次のように続けた。
「まずは村民に元気を与えたい。政策のトップに漁業振興を上げたが、神恵内の漁業は後継者不足に悩んでいる。それを念頭に置きながら、漁業を志願する外国人を対象とした日本語学校の開設を提案していきたい。日本の若者にも漁業をやろうと訴えていきたい」

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出馬会見に臨む瀬尾氏(1月16日、岩内地方文化センター)

現職の高橋昌幸氏(神恵内村役場提供)

越前谷由樹氏(右)から激励を受ける瀬尾氏

岩内港から泊原発を望む

出馬会見に臨む瀬尾氏(1月16日、岩内地方文化センター)

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