札幌市中央区の本社事務所(桂和大通ビル50)
不動産仲介、不動産賃貸管理、駐車場管理を事業の3本柱としているネクステップ(本社札幌・水口千秋社長)。北洋銀行(本店札幌)出身者が代々社長に就任し、北洋銀との関係は親密だ。そんな「北洋」の看板に泥を塗りかねない事態が同社で起きている。それは水口社長を中心とした経営陣の暴走、会社私物化疑惑だ。同社の関係者から本誌に告発が寄せられ、北洋銀の現役、OBからも疑問の声が続々届く──。ネクステップを覆う暗雲を追った。(本誌取材班)
新居前社長とは真逆の対応 社員給与より役員報酬が先
ネクステップは、破綻した旧北海道拓殖銀行の不動産関連会社タクトの流れを汲み1998年11月に設立された。
北洋銀行グループのノースパシフィック、交洋不動産などのほか、伊藤組土建、セコマ、札幌振興公社、札幌通運などが株主に名を連ね、同グループの持ち株比率は約19%。資本系列では北洋銀行のグループ会社の位置づけではないが、これまで3代に亘って北洋銀出身者が社長や役員を務めており、実質的には「北洋銀行」の冠を背負った不動産会社として世間的に認知されている。
初代社長には旧拓銀バスセンター東支店長だった江村正氏が就任、2006年12月には北洋銀の執行役員東京支店長の新居隆氏が2代目の社長に就任(新居氏はその後、高砂酒造社長などを歴任)している。
この2人がトップだった時代は、優良な賃貸物件の所有を増やし内部留保の維持にも気を配るなど、旧タクト出身を含めて約50人の社員が一丸となって社業に取り組んでいたとされる。
この中で3代目社長として2016年1月に就任したのが水口千秋氏(67)だった。水口氏は慶応大出身で79年4月に旧拓銀に入行、10年6月に北洋銀行執行役員旭川中央支店長、12年6月に執行役員法人部長、13年6月には常務執行役員法人部長に昇格した経歴の持ち主だ。
2代目社長の新居氏が北洋グループの定年である65歳に近づいてきたため、当時の頭取だった石井純二氏に後任について相談。その際に石井氏が指名したのが水口氏だった。
行内では、石井頭取と水口法人部長との関係は良好だったという。
「水口氏は危なっかしいところがあったが、石井頭取はそこをうまく使っていた」(北洋銀OB)
水口氏が北洋銀の法人部長だった時にはこんなこともあった。同行出身の道内企業幹部が憤懣やるかたない様子で打ち明ける。
「水口さんは、ある土地物件を北洋銀と取引のない、しかも私のライバル会社に紹介した。それはないだろうと指摘したら、石井頭取が水口氏と一緒に謝罪に飛んできたよ」
一方で「彼は支店長時代に、融資や預金の目標を立てたら必ず実行した」「頭の回転が速く有能で、批判は聞いたことがなかった」などと手腕を評価する声もある。
銀行時代の評価は分かれるが、ネクステップで社長になってからは、それまで隠れていた別の顔が露呈してきた感がある。
まず役員報酬問題だ。同社の社長の役員報酬は北洋グループの規定に倣い、それまで年間1200万円とされてきた。
しかし水口氏は就任後、取締役会で経営幹部の役員報酬の増額を提案。これにより自分の給料を一気に倍の2400万円に引き上げた。
「事実上、北洋銀のグループ企業である以上、自らの役員報酬も他の企業に準じるのが筋でしょう。彼の報酬金額は北洋銀の役員以上になっている可能性もあり、これでは“親子逆転”です」(業界関係者)