首相批判封殺の波紋?
「この国賊が」――

2022年03月号

野次排除批判の意見は、必ずしも野党寄りの立場からのみ上がったわけではなかった
(2019年7月18日付『要望・意見受理カード』)

野次問題で道内外から賛否の声 道警受理、2年間で900件超

国家賠償請求訴訟の判決言い渡しを1カ月後に控えた、首相演説野次排除事件。3年前の夏に札幌でその出来事が起きて以来、政権批判の声を封じた警察の行為はどう評価されてきたか。公文書開示請求で得られた記録を紐解くと、昨夏までの2年間に地元警察へ寄せられた意見は900件以上に上り、その多くが排除に批判的な声だったことがわかる。そこには、さまざまな立場の有権者の率直な思いが綴られていた――。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。53歳

「自由」指摘し「国賊」批判排除への意見、公文書に


《なんで社民党とか民主党とか共産党とかが喜ぶことをするかなって。思想の自由があるんだったら捕縛しちゃいけないよな。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■首相の評判を落とすためにやったんだろ。パチンコ屋にでも安定就職して、あぶく銭稼いで下さい。この国賊が》
 (※ 伏字は道警)
 北海道警察の代表電話がその声を受けたのは、2019年7月18日午後。当時のニュースで首相演説野次排除事件を知ったという電話の主は「やり過ぎなんじゃないの」と話を切り出し、警察の現場対応への苦言をひとしきり連ねた末、先の「国賊」発言で通話を締め括った。
 訴えを額面通り受け止めるなら、当時の総理大臣に「やめろ」などと野次を飛ばした人たちを警察が「捕縛」する行為は誤っており、むしろ首相の評価を下げて野党を利することになる、という主張。本邦に「思想の自由」がある以上、言論には言論をもって応じるべし――、そんな信条も垣間見える。「国賊」という熟語は一般的に、民族派団体など保守思想の持ち主が使う言葉だ。
 この声に耳を傾けたのは、道警本部の総務部に属する警察相談課の警部補。聴き取られた意見は文字にまとめられ、同日付の『要望・意見受理カード』に記録された。課長決裁を経たカードはその後、刑事部の捜査二課、警備部の公安一課と同二課、及び札幌中央警察署に「参考回付」されたことがわかっている。
 同年7月15日に排除事件が発生して以来、道警では同課を含む21の部署が道民から寄せられる意見に対応し続けた。それらはすべて先のカードなどにまとめられ、公文書として保管されている。
 その総数が昨年7月までの2年間で900件あまりに上ることが、道警への文書開示請求でわかった。

北海道の知事部局などでは大量の公文書をCD-Rに収録して開示する対応が可能だが、道警は紙による交付しか認めておらず、文書の入手には一枚あたり10円の手数料が発生する
(昨年12月27日付の文書交付案内)

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排除された人たち自身も、生の声で警察への意思表示を続けている(昨年7月10日夕、札幌市中央区の北海道警察本部前)

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