閉院まで「あまの整骨院」が入居していたトレーニング施設(市内鳥取大通)
柔道整復師が患者を利用し共済金や保険金を不正申請
釧路市内で整骨院を営んでいた柔道整復師が患者の施術録を書き換え、損保会社などから共済金や保険金を騙し取った疑いが浮上している。この中で最も被害額が大きいと目されているコープ共済連では昨年の夏、詐欺容疑で本人の刑事告訴に踏み切り、釧路署による捜査の行方が注目されているところだ。多くの患者を巻き込む形で捏造された施術録──。その手口とはどのようなものだったのか。(本誌編集長・工藤年泰)
1月6日、日本コープ共済生活協同組合連合会(本部東京・コープ共済連)は記者の取材に、釧路市内の柔道整復師を詐欺容疑で昨年2021年8月6日付で釧路署に刑事告訴し、同日に受理されていることを明らかにした。
コープ共済連の広報担当者によれば、告訴に伴い届け出た被害額は165万円。2年前の2020年6月以降、同市内の関係者から情報提供があり調査を開始。「その結果、件数にして76件の申請を不正請求と認定しました」(同広報)とし、先の額を柔道整復師から騙し取られたとしている。
訴えられた当事者の実名を明らかにしておこう。2017年9月、市内でオープンし、20年4月頃に閉院した「あまの整骨院」の元院長・天野賢二氏(51)、その人だ。
この問題に絡み、2020年11月19日付の北海道新聞地方版(釧路・根室)朝刊は、「クレインズトレーナー 天野氏の契約解除」との見出しで、次のように伝えている。
「アイスホッケーアジアリーグのひがし北海道クレインズを運営するひがし北海道クレインズ合同会社(釧路市)は18日、トレーナーだった柔道整復師の天野賢二氏との業務委託契約を、同日付けで解除した。(中略)関係者によると、天野氏が院長を務めていた整骨院で不適切な治療費の取り扱いなどがあり、損保会社の調査を受けているという。(後略)」
あまの整骨院開業以降、しばらく同整骨院に勤務していた柔道整復師が記者の取材に応じた。まずは告訴したコープ共済連の求めに応じて同氏が提出した陳述書の一部を次にひきたい。
「あまの整骨院における診療実態について
1 はじめに 天野氏はコープ共済や他の保険会社(自賠責保険・スポーツ保険)の制度、あるいは健康保険制度を利用(悪用)して共済金や保険金を上記の会社から騙し取っていましたが、その手口について私が認識している限りの事実を説明致します。
2 天野氏の具体的手口 まず、前提として、天野氏はあまの整骨院に継続的に通院している患者に目を付けて、通院して1か月程の患者に対し、保険加入の有無、特にコープ共済が提供している共済制度(通院の際に、1日当たり1000円~2000円程度が支給されるプラン)への加入の有無について確認していました。 同氏によれば、天野氏は常日頃から共済金の支給に伴う審査が甘いという意味で「コープ共済は楽勝だ」と述べていたとされる。陳述書は、こう続いている。
「天野氏は、患者に対して共済金や保険金(以下あわせて「共済金等」といいます)請求の対象ではない案件について、患者に対し保険会社ないしコープ共済に共済金等の請求をさせる方法により、共済金・保険金を詐取していました」