村長選出馬への意向を固めた瀬尾氏
漁業振興、積丹半島の魅力探しを
高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の選定に向けた文献調査が進む後志管内の神恵内村で任期満了に伴う村長選が2月22日告示、27日投開票の運びとなっている。同村長選には現職で6選を目指す高橋昌幸氏(71)がすでに出馬を表明。対抗馬擁立の動きがなく無投票の公算が大きかったが、7年前に泊村に移り住み泊原発の廃炉に向けた活動を続ける瀬尾英幸氏(79)がこのほど出馬の意向を固めたことが分かった。「文献調査に反対している住民のためにも声をあげなくては」と語る瀬尾氏が取材に応じた。 (武智敦子)
「泊村という原発城下町に住んでいる以上、核のゴミ問題を黙って見過ごすことはできなかった」
こう語る瀬尾氏が石狩市から泊村に移り住んだのは2015年9月。家族は反対したが、「米軍新基地建設に反対するため全国から千人以上が沖縄に移住していると聞く。それに比べると泊村は目と鼻の先」。迷いはなかった。
村の公営住宅でひとり暮らしをしながら脱原発に向けた住民団体を組織。仲間と街宣車に乗り込み原発から出る放射性物質による健康被害、原発立地による漁業など地場産業の衰退を訴えてきた。2年前には噴火湾沿岸を回る脱原発キャラバンや青森県の大間原発など関連施設の視察も行なった。
寿都町と神恵内村が、使用済核燃料を再処理した後に残る核のゴミを地層処分するための第一段階となる「文献調査」に応募した時は「原発も核ゴミも本質は健康被害」と危機感を強め、街宣活動にのめり込んだ。
泊原発周辺の4町村(泊村、神恵内村、共和町、岩内町)を含む管内の住民団体が連携しながら、原発の廃炉と核ゴミ文献調査の中止を求めていく「泊原発立地4町村住民連絡協議会」設立の呼びかけ人としても奔走。同協議会は1月16日に正式発足する。寿都町では昨年10月26日に文献調査の是非を主な争点とした町長選が行なわれ、現職の片岡春雄町長が1135票を獲得し6選を果たしたが、調査の中止を掲げた対抗馬が900票まで追い上げ、まちを二分した選挙戦の激しさがうかがえた。
だが、人口約800人の神恵内村の村長選には反対派候補擁立の動きはなかった。
「神恵内村にも核ゴミ調査に反対する住民はいるが、反対派としての組織がない。私も反対する候補を探してきたが見つからなかった」(瀬尾氏)
自分が出馬するしかない。そう考えるようになったのは昨年の3月頃。だが、夏場に体力の衰えを感じ一度はあきらめた。そんな中で昨年12月に高橋氏が6選に向けて出馬を表明。やはり対抗馬は現れず選挙は無風になるのは確実だった。考え抜いて「たとえ、玉砕しても反対の声を上げるしかない」と腹をくくった。