緊急寄稿【4】いま、ウイグルの声に耳を
支援は現実を知ることから

2022年01月号

祖国のために闘い続けるトゥール・ムハメット氏(写真はいずれも同氏提供)


中国共産党、民族浄化の経緯と変節
トゥール・ムハメット(日本ウイグル連盟会長)

1994年に訪日し、現在人権活動家として中国共産党の犯罪を告発し続けている日本ウイグル連盟会長、トゥール・ムハメット氏の緊急寄稿、第4弾をお届けする。国際社会から非難を受けている新疆ウイグル自治区におけるジェノサイドは、どのような形で始まりどのようにしてエスカレートしていったのか。今回は中国共産党の民族浄化政策の経緯と変節がテーマだ。日本は、いつまでこの問題に及び腰を続けるのか──。

(トゥール・ムハメット)
1963年東トルキスタン(中国・新疆ウイグル自治区)ボルタラ市生まれ。北京農業大学(現在の中国農業大学)卒業後、85年から94年まで新疆農業大学で講師を務める。94年に訪日し九州大学に留学。留学中に中国で秘密扱いになっている天安門事件(89年)を知り、97年に新疆で起きた中国によるウイグル人弾圧事件を契機に人権活動家として歩み始める。2015年日本ウイグル連盟会長に就任。新疆にいる娘と連絡が取れない状態にある。農学博士。58歳


中共中央第七号文件とグルジャ虐殺


 先の11月号で、1985年12月12日にウルムチで起きた共産党の政策に反対する学生デモを報告しましたが、今から36年前の当時は、ウイグル人、チベット人などに懐柔政策を取っている胡耀邦氏が中国共産党総書記の時代だったので、武力による弾圧は起きませんでした。
 当時の共産党新疆ウイグル自治区委員会書記の宋漢良は胡耀邦に近い人物と言われ、2年後に胡耀邦が失脚すると同時に更迭されています。
 中国共産党のウイグル人に対する政策は、更迭された宋漢良の代りに王楽泉という人物が共産党新疆ウイグル自治区書記になってから徐々に強硬になっていきました。この中で1991年に起きた旧ソ連の崩壊は、バルト三国や中央アジア五カ国の独立をもたらし、中国共産党に衝撃を与えました。この出来事を契機として、中国共産党中央はそれまでのウイグル人政策を懐柔の宥和策から民族同化、人種絶滅策に段階的にシフトしていくのです。
 旧ソ連が崩壊するまで中国のウイグル政策における基本的なスローガンは、「新疆における主な危険はソ連社会帝国主義によるもの」でした。つまり、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)における施策の基本は、いかに敵対するソ連の影響を封じ込めるかにありました。しかし、旧ソ連の崩壊に伴い西部国境において中国と対峙する勢力は一気に消え去り、中国の東トルキスタン対策は180度転換することになるのです。
 この変化を象徴しているのが、1996年3月19日北京で秘密裏に開催された中国共産党中央政治局常務委員会主催の「新疆工作会議」と、同会議で採択された「中共中央七号文件」です。
 この「中共中央七号文件」では、中国共産党の新疆ウイグル自治区におけるいままでの諸政策を根本的に変え、中国の憲法で自治民族であると認定されているウイグル民族を徐々に中国人に同化していく大まかな道筋が示されました。ここでは政治、経済、外交、軍事、文化、教育といったあらゆる分野において国と地方が一体となり、この同化政策を実行していくことに協力するよう指示されていました。
 そこにはこんな内容が列挙されていました。新疆ウイグル自治区におけるウイグル語教育システムを段階的に廃止すること。中国共産党に忠誠な幹部や知識人を養成するためウイグル人の中高生を毎年数千人規模で北京、上海、広州など沿海部の都会の中学校や高校に開設した「新疆クラス」に入学させること。これは、彼らをウイグル文化の影響から完全に切り離し、漢人文化の教育環境で育てることを目的にしていました。
 さらに漢人移民による準軍事屯田集団である生産建設兵団の強化、外交手段による在外ウイグル人組織の弱体化、ウイグル人に対する計画出産政策の強化など、そこにはウイグル人に対するさらなる締め付け政策の数々が決められていました。
 中国共産党中央のこのような政策が実施されるにあたり、当局はすぐにウイグル人の抵抗を受けました。1997年2月5日、東トルキスタンの西部都市であるグルジャ市で千人あまりがデモ行進を行ない声をあげたのです。これが世に言う「グルジャ虐殺」の始まりでした。
 このデモのきっかけは、先の七号文件の指示通りに中国当局がウイグル伝統文化復興の弾圧を強化し、メシュラプという伝統的な祭を禁止したことでした。そればかりか、ウイグル人の親睦を図り若者の健全な成長を願って設立されたサッカーリーグも禁止され、競技会場は破壊を受けていました。これらに抗議したウイグル人数十人の処刑ニュースが流れ、ラマダーンで断食をして自宅でお祈りを捧げている若者数百人が逮捕・監禁されるという事態も起きていました。グルジャでのデモは彼らの解放を要求する形で発生したものでした。
 この日、ウイグル人たちがグルジャ市内で平和的に行進していた時に、当局は正規軍、武装警察、周辺の生産建設兵団の民兵など1万人以上を出動し、デモ隊に向かって発砲。現場では百を超える死者が出ました。

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