自治体ウォッチ──「毎年100人超え」一歩先ゆく沼田町の移住定住政策
“役所の縦割り”を超えて確立させた移住ブランド

2021年12月号

2016年から移住定住応援室を設けてブランディングに力を入れてきた沼田町役場


まちに戻った子どもたちの歓声

北海道のほぼ中央に位置し、稲作中心の農業のまちでNHKの連続テレビ小説「すずらん」のロケ地としても知られる雨竜郡沼田町(横山茂町長)。最近では、雪の多さを逆手に取った雪氷エネルギー利活用での実績もある。いま、人口約3千人のこのまちが移住定住者のモデル自治体として注目されている。移住者は毎年100人を超え、子どもの数も年々増えている数少ない自治体だ。移住者を惹きつける魅力はどこにあるのか──。同町の移住定住政策をレポートする。(佐久間康介)

空き家が一軒もない沼田町


「つい2年ほど前まで子どもの姿がなかった町内会に家族連れが5世帯も移住してきて、子どもの声が響き渡っています。ここ何十年もなかった光景に、地元に住む高齢者も嬉しそうです」
 こう話すのは、沼田町役場住民生活課移住定住応援室の岩井俊直主査(41)だ。北海道の町村は、少子高齢化と人口減少が進み、どの自治体でも防犯上も問題になる空き家対策に悩みを抱えているが、ここ沼田町では今や空き家は一軒もない。同応援室が移住者と空き家の所有者を橋渡し、空き家が底をついてしまうという他の自治体がうらやむほどの嬉しい悲鳴を上げている。
 沼田町が移住定住応援室を設けたのは2016年。それまでは専門的に移住を扱う部署はなかったが、この応援室に室長以下6人を配置して積極的にYouTubeや雑誌での発信に力を入れてきた。
「スターバックスコーヒーはCMとかやりませんが、おしゃれで珈琲が美味しいというブランドが確立されています。私たちもいろんな移住フェアなどに顔を出して、“移住するなら沼田町”というブランディングに取り組んできました。その結果、首都圏や札幌圏で当町の認知度が高まってきた」と前出の岩井さん。
 住む場所はもちろん、仕事、子育て、医療など移住にはさまざまなハードルがある。こうした受け入れ体制が整っていなければブランディングはうまくいかない。役所の縦割り組織では移住者を惹きつける支援策を拡充することは難しいため、同応援室が中心になり組織に横串を通して移住者にとって目に見える支援策を拡充してきた。その目玉が住宅の購入や新築、改修の奨励金制度だ。
 自己所有地で住宅を新築する場合は、基本額として20代で170万円、30代で130万円、40代以上なら80万円と世代別に細かく支援、加算額として子育て世帯(中学生以下の子どもを養育する世帯)の新築には子どもひとりにつき50万円、婚姻して3年以内の新築なら50万円を支援する。町の試算によると、20代の新婚子育て世帯が住宅を新築すると、最高で570万円を支援、全国でも最高水準の奨励金制度になっている。
 中古住宅を購入する場合でも手厚さは変わらない。こうした制度は従来の町民にも適用される。多くの道内自治体も移住者に向けてこうした住宅支援策を採用しているが、10万円から20万円が相場とされ、沼田町は破格の支援額。今年度からは子育て世帯には、地元産「ゆめぴりか」1俵(60キロ)を贈呈する取り組みも始めた。町財政の健全度が高いことが、こうした支援メニューの裏付けになっている。
 

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