受け継がれた土作りが干ばつ被害を軽減
日本農業賞大賞と天皇杯を受賞
国も太鼓判の「きたみらい玉葱」

2021年12月号

広域連携のさらなる強化に力を入れる大坪組合長

(おおつぼ・ひろのり)1958年3月27日訓子府町出身。1976年美幌高校農業科卒業後、兄の体調不良を受け実家の農業を継承。91年に馬鈴薯振興会の役員に就任し、JAと一体となった地域農業振興に携わるように。2007年JAきたみらい理事、2010年常務理事、16年代表理事専務を経て20年代表理事組合長に就任。63歳

Agri Report――オホーツク発・「JA きたみらい」大坪広則組合長に訊く

オホーツク圏における農業の牽引役と言っても過言ではないきたみらい農協(=JAきたみらい、大坪広則組合長)。生産量全国一を誇るたまねぎは、地域の顔となる作物としてすっかり定着。2年前に完成したアジア圏最大規模のたまねぎ集出荷選別・冷蔵貯蔵施設は、販売力強化などさまざまな価値向上に大きく寄与している。そのたまねぎと長年共に歩んだきたみらい玉葱振興会は今年、日本農業賞大賞と農林水産祭の天皇杯という2つの栄誉を受けた。コロナ禍や今夏の干ばつなど強い向かい風に晒されながらも、生産者の努力に報いる取り組みに力を入れ続けるきたみらい農協。その舵取りを担う大坪組合長に、これからの方針などを訊ねた。
(10月12日収録)

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8農協合併のシナジー効果


 ──大坪組合長が農業に携わり始めたのはいつ頃からですか。
 大坪
 農家の次男として生まれ、家業を継ぐ予定だった兄が体調を崩してしまったことを受けて、高校を出た後に私が引き継ぎました。作っているのは畑作3品と呼ばれている馬鈴薯・小麦・ビート、それにたまねぎです。農協には父から経営を受け継ぐと同時に入りました。
 ──このJAきたみらいですが、2003年に1市2町(北見市・訓子府町・置戸町)の8農協(北見市・相内・かみところ・おんねゆ・るべしべ・たんの・おけと・くんねっぷ)が合併してできた、とても規模の大きな農協です。合併農協ゆえの苦労などもあるのでは。
 大坪
 当初はいわゆる“我がまち”“我がむら”意識のため、足並みがなかなか揃わない大変さがあったと伺っています。それを「何としてもひとつにならなければだめだ」と初代組合長が先頭に立って一生懸命まとめあげた。一方で組合員の方々も、合併によるメリットを少しずつ感じるようになってきました。
 ──そのメリットの内容は。
 大坪
 それまで各単協で行なっていたものを、大きな規模で集約したことが結果として組合員の方々の負担軽減につながり、それを地道に続けてきたことで事業運営において組織と生産現場がバランス良く連携するようになりました。そういった関係性ができあがっていったことが、今日に至る組織基盤の構築につながったのだと思います。
 ──今年、干ばつによりたまねぎをはじめ、さまざまな作物が大きな被害を受けたと伺いました。
 大坪
 生育にとても大事な時期に気温30℃以上の日が10日以上続くという事態に見舞われたので、収穫時期には相当厳しくなるだろうと思っていました。
 ですが収穫時期に入ってみると、麦と米は豊作。ビートは現時点の見通しで例年並みになりそうです。豆は高温の影響でサヤを付ける花が落ちてしまったことを心配しています。たまねぎは相当厳しいだろうと予想していましたが、安定供給が可能な収量は見込めそうです。
 これは、長年にわたり畑をしっかり肥やしてきた生産者の努力の賜物に他ならないと思っています。
 それにしても自然が相手とはいえ、これだけの干ばつは私自身初めての経験ですよ。
 ──現下のコロナ禍がもたらしている貴組合への影響では、どういった事柄がありますか。
 大坪
 農協の事業としては、感染防止対策をしっかり行ないながら、時間差出勤などで業務が止まることのないよう心掛けました。農協の事業は多岐にわたっており、それらを滞らせるわけにはいきませんから。
 懸念しているのは農畜産物の在庫余りが起きてしまうこと。そして、これからの出口対策が大きな課題になっていくものと思われます。ただ我々の農協でクラスターが起こっていないことには、安堵しています。
 ──全ての農業従事者の懸案事項である後継者問題についてはいかがですか。
 大坪
 合併当初に1500以上あった組合員世帯が現在は約950世帯になっていることからも、農家の減少にはなかなか歯止めが掛けられないという現実があります。ですが一時期よりは離農者などは少なくなっています。
 

たまねぎ集出荷選別・冷蔵貯蔵施設の稼働はさまざまな波及効果を生んだ(写真提供、きたみらい農協)

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たまねぎ集出荷選別・冷蔵貯蔵施設の稼働はさまざまな波及効果を生んだ(写真提供、きたみらい農協)


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