“核のゴミ”レポートPART26 寿都町長選の結果と今後の「住民投票」の行方
厚かった議員票の壁

2021年12月号

選挙戦の最終日、片岡春雄・越前谷由樹の両氏は市街地を中心に最後の訴えに奔走した(10月25日撮影)


現職片岡氏に越前谷氏が惜敗
処分政策の審判は住民投票へ

最終処分地の選定に向けた事前調査問題を最大の争点にして、全国的な注目を集めた後志管内寿都町の町長選挙が終わった。現職の片岡春雄氏(72)が1135票を獲得して6選を果たし、核のゴミ「文献調査」の撤回を訴える前町議の越前谷由樹氏(70)は235票の僅差で及ばなかった(投票者総数2063人。投票率84・27%)。「町長派議員らを軸にした組織選挙vs草の根運動」の様相を呈したが、今後の核ゴミ問題の焦点は曲折の末に今年3月に制定された「住民投票条例」に基づく直接投票の動向に移る。静かな漁師町の人々の間に分断を持ち込んだ「国策」の矛盾を問うことにもなる、住民投票の行方から目を離せない──。(ルポライター・滝川 康治)


草の根選挙の対抗馬を制し僅差で現職が6選を果たす


 10月26日深夜、寿都町長選を取材中の筆者は、みずからのフェイスブックに以下の報告を投稿した。
「1135票vs900票──26日投開票の寿都町長選は、現職の片岡春雄氏が制し、6選を果たした。午後9時半すぎ、敗れた越前谷由樹氏の選対事務所からは、すすり泣きの声が漏れる。(略)その直前、旧知の首長からの問い合わせの電話が鳴った。結果を伝えると彼は絶句し、『そんなことがあるのか。寿都町民(の判断)はおかしいよ』と憤った。
 片岡陣営の祝勝会には、背広姿の人たちが目立ち、組織選挙であったことを物語っていた。
『後援会がなければ、結果はひっくり返っていたかもしれない。核ゴミは争点ではないと訴えてきたが、住民の声が結果に表れた。今後は、原点から学び、細かな(住民の)意見を聞いて冷静な議論が進むようにしたい』。片岡氏はこう挨拶した。
 私の経験値は通用しなかった。住民運動は負けの歴史だ。しかし、あきらめず地道に運動の輪を広げていけば、少しずつ世の中を変えることが出来る。次の焦点は、概要調査の是非をめぐる住民投票。早ければ来年中に行なわれるが、知事選の行方とも絡んで目が離せない。20年ぶりの町長選で示された民意を基礎に、次の運動が始まる」
 文中の「経験値」は、過去に経験した首長選取材に基づくもので、最終日の雰囲気で勝敗が窺えるケースが多い、というもの。打ち上げに集まった人数、熱気とも越前谷陣営が上回ったが、開票結果は違った。20年ぶりの選挙戦の予測は難しい。
 僅差で9選を果たした片岡春雄氏は、核のゴミ最終処分場の選定に向けた事前調査について、
「核の重さをもっと原点から勉強しながら、賛成・反対を抜きにして理解し、概要調査前に住民投票で皆さんの意見を聞いて判断したい」
 と述べ、投票結果によっては次の概要調査に同意する意思を示した。
 惜敗した越前谷由樹氏は、住民団体が直接請求した条例案を否決し、小西正尚町議会議長の差配によって町長提案を修正した現行の「住民投票条例」をこう批判する。
「この条例は欠陥だらけであり、認めるべき内容ではない。いったん破棄し、当初、住民が提案した内容に基づいてやっていただきたい」
 1年後にも実施される住民投票をめぐり、今後も両陣営が火花を散らすことになりそうだ。
 

告示を前に住民グループが設置した看板。美しい写真で〝核のゴミ〟のない町を訴える

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片岡氏の街宣車は自民党の広報車。組織選挙を展開し、岩内町在住の村田憲俊道議(写真右)が応援(10月25日夜)

選挙戦の最終日、子どもたちが越前谷氏に〝感謝状〟と紙の金メダルを贈る

出典:「子どもたちに核のゴミのない寿都を! 町民の会」会報第21号

片岡氏の街宣車は自民党の広報車。組織選挙を展開し、岩内町在住の村田憲俊道議(写真右)が応援(10月25日夜)

選挙戦の最終日、子どもたちが越前谷氏に〝感謝状〟と紙の金メダルを贈る

告示を前に住民グループが設置した看板。美しい写真で〝核のゴミ〟のない町を訴える

出典:「子どもたちに核のゴミのない寿都を! 町民の会」会報第21号


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