道新労組委員長、初めて語る
「知る権利」守り抜く

2021年12月号

会社が一切の質問に答えない中、労働組合が初めて取材に応じ、逮捕問題に取り組む意義などを語った
(札幌市中央区の北海道新聞本社)


記者逮捕問題で決意新た
北海道新聞労働組合・安藤委員長に訊く

北海道新聞の新人記者逮捕事件から4カ月が過ぎ、道新労組がこの問題で初めて本誌の取材に応じた。事件翌月の7月半ばにその任に着いた中央執行委員長の安藤健さん(48)は、まさに〝最初の仕事〟として逮捕問題と向き合うことになった。これまでの道新の対応については「報道機関として説明責任を果たせていない」と考えている。若手記者の萎縮や読者の不信を解消するには、何よりも「知る権利」の意義を確認する必要があるという。
(小笠原 淳)


 本誌など既報の通り、道新記者逮捕事件が起きたのは本年6月22日。学長解任の動きが進んでいた旭川医科大学で、同社の新人記者が学長選考会議の会議室付近に“侵入”したとして大学関係者に現行犯逮捕された(常人逮捕)。地元の旭川東警察署は48時間弱にわたって記者の身柄を拘束、職場である道新は同記者の実名を表記して経緯を報じた。
 その記事で事件を「遺憾」と評した道新は、取材中の記者を逮捕した旭医大の行為へ異を唱えることもなく(のち抗議)、また記者を拘束し続けた警察の捜査にも疑問を呈することがなかった。先の実名報道と併せ、こうした対応に社内からは批判の声が噴出。当時の労働組合執行部は会社に経緯説明を求め、6月下旬には日本新聞労働組合(新聞労連)の一員として組合員の不安解消を求める意見書を提出するに到っている。
 安藤さんら現執行部が発足したのは、事件発生から3週間ほどが過ぎた7月16日のこと。溯って同7日には道新朝刊に読者報告の記事が載ったが、あたかも現場に責任があるかのようなその論調は、社内外からさらなる批判の声を招くことになる。


社の初動に問題があった


 ――まず、そもそもの旭川医大の逮捕行為をどう評価するか、伺いたいんですが。
「記者だということがわかれば、常人逮捕の必要はなかったと考えます。状況から言って会議室前にいたのが記者であることは容易に想像できた筈ですし、警察に引き渡すまでの間にいくらでも訊くチャンスはあったのではないでしょうか」
 ――その後の警察の捜査については。
「手続き自体は仕方なかったのかもしれませんが、48時間も拘束する必要があったのか、大いに疑問です。取材目的だとわかった時点で、在宅捜査にできたでしょう。そこでスマホの中身などを調べたということは、警察として取材の指示系統などに関心があったのではないかと疑ってしまいます」
 ――最も重要な、会社の対応についてはどうでしょう。とりわけ実名報道の是非は。
「実名表記について、社内で疑問の声が大きいことは確かです。実際、前執行部はこの件で会社を批判していました。とはいえ事件報道は、真実性担保のため実名表記が原則です。会社は今回、記者を『公務員に準ずる立場』とみなして実名を出したと説明していますが、これはあながち誤りとは言えないのではないかと思っています」
 ――ちょっと意外です。前執行部とは違う立場ということですか。
「もちろん『指示を受けて現場へ行ったのに、なぜ実名なのか』という疑問は理解できます。もし私自身がデスクだったとしても、この件は匿名で報じていたと思う。ただ、先ほどの原則をふまえると『実名は絶対によくない』とまでは言い切れないのではないか。むしろこれを機に、実名・匿名のあり方を議論できる場をつくることが大事なのではないかと思っています」
 

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