“告発・絶望の学府⑧
「道の責任は重大」

2021年12月号

その夜、北海道の担当課は初めて被害者に直接謝罪したが、加害が認められた教員は 1 人として姿を見せなかった(10月29日夜、函館市の函館国際ホテル2階会議場)


第三者委がパワハラ52件認定 道立看護 告発1年で道が謝罪

決意の告発から1年以上が過ぎて得られたのは、被害者にとっては当然の結論だった。否、それでもなおすべての事実が解明されたとは言い難く、被害の救済に到ってはようやく緒についたばかり。すでにその道を諦めてしまった若者は1人や2人ではなく、失われた時間は取り返しようもない。この秋、北海道立高等看護学院で疑われていたパワーハラスメントの数々が初めて事実と認められた。調査結果の「52件」には、「少なくとも」の一句を冠さなくてはならないことを確認しておく。
取材・文 小笠原 淳1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。52歳 



教員11人関与、被害52件副学院長が「独善的運営」


 10月29日夜、函館市内。
「10名を超える教員について、ハラスメント行為が確認されたところでございます」
 北海道内外各地から足を運んだ30人ほどの硬い視線を受け、道保健福祉部 地域医療推進局の岡本收司局長らが頭を下げる。
「これまでの間、ハラスメントにより傷つき、悩み、苦しみ、心穏やかに過ごすことのできない日々を送られてきた学生・元学生の皆さん、そして保護者の方をはじめご家族の皆さん、さらには地域の関係者の皆さんに対しまして、心からお詫び申し上げます。申しわけございませんでした」
 道立高等看護学院で長く疑われてきた教員によるパワーハラスメント問題で、道が初めて関係者に直接謝罪した瞬間だ。道南・江差の学院で被害告発の声が上がり始めてから、すでに1年以上が過ぎていた。
 *
 本年5月に発足した第三者調査委員会が最後の会合を設けたのは、この謝罪の夜から2週間ほど溯る10月12日のこと。学生24人・教員15人を対象に聴き取り調査を重ねてきた同委は、うち学生14人のパワハラ被害を認定し、同じく教員11人の関与を認めたことを明かした。調査対象事案は江差と道東・紋別の2学院で計101件に上り(江差70、紋別31)、うち52件でハラスメントを認定、残る49件の中にも「不適切な指導・対応」と認められたケースが35件あった。
 この時点でまだ道に提出する『調査書』をまとめ終えていなかった委員らは、会合後の記者会見で先んじてその概要を明かすことになる。
 

被害相談対応の記録をほぼ全面墨塗りで開示した道は、個人情報保護を盾に公務の適正性の検証を妨げている(道が4月27日付で一部開示した公文書)

この6年間のケースがハラスメント認定された一方、過去には志半ばで命を絶った学生もいたことがわかっている(檜山管内江差町の下宿)

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第三者調査委員会は4度めの会合後に調査結果を報告、52件のハラスメント認定を伝えた上で、道のこれまでの対応に苦言を呈した(10月12日夕、函館国際ホテル8 階会議場)

被害に気づかなかった自分の責任は重い」と、伊東則彦学院長(10月13日午前、檜山管内江差町の道立江差高等看護学院)

地元議会では保健福祉部トップが頭を下げたが、問題追及を続ける議員は「被害者に直接謝罪を」と求めた(11月4日午後、北海道議会保健福祉委員会)

認定されたハラスメント全52件の中には、犯罪が疑われる事案も――一覧中の「A教員」は副学院長を示す(第三者調査委員会がまとめた『調査書』概要版)※ 記載が47 件なのは、複数の教員が関与したケースが含まれるため

第三者調査委員会は4度めの会合後に調査結果を報告、52件のハラスメント認定を伝えた上で、道のこれまでの対応に苦言を呈した(10月12日夕、函館国際ホテル8 階会議場)

被害相談対応の記録をほぼ全面墨塗りで開示した道は、個人情報保護を盾に公務の適正性の検証を妨げている(道が4月27日付で一部開示した公文書)

被害に気づかなかった自分の責任は重い」と、伊東則彦学院長(10月13日午前、檜山管内江差町の道立江差高等看護学院)

この6年間のケースがハラスメント認定された一方、過去には志半ばで命を絶った学生もいたことがわかっている(檜山管内江差町の下宿)

地元議会では保健福祉部トップが頭を下げたが、問題追及を続ける議員は「被害者に直接謝罪を」と求めた(11月4日午後、北海道議会保健福祉委員会)

認定されたハラスメント全52件の中には、犯罪が疑われる事案も――一覧中の「A教員」は副学院長を示す(第三者調査委員会がまとめた『調査書』概要版)※ 記載が47 件なのは、複数の教員が関与したケースが含まれるため


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