再生可能エネルギーを問い直す【最終回】──風力発電問題研究会の高畑滋さんに訊く
メガ化した再エネの誤謬

2021年11月号

銭函海岸に建つ銭函風力発電所


巨大な風力・ソーラー発電が健康を損ない自然を壊す皮肉

再エネの中でも風量発電に焦点を当て低周波・超低周波音による健康被害などを探ってきたシリーズの最後は「日本科学者会議北海道支部」の会員で風力発電問題研究会の高畑滋さんのインタビューで締めくくる。同研究会は、石狩市など札幌周辺の風力発電から出る低周波・超低周波音の測定を続けながら被害の実態の解明に取り組んでいる。高畑さんは「自然エネルギーは活用すべき」とした上で「それぞれの地域で自前のエネルギーをまかなうのが理想」とし、風力やソーラー発電がメガ化して自然や健康を損なうことに警鐘を鳴らす。近年、しきりに国が旗振りをする再エネについて、我々はいま一度よく考えるべきではないか。(武智敦子)
 

2014年から測定開始


 ──農水省林業試験場北海道支場の主任研究官などを歴任しておられますが、風力発電問題に携わるようになったのはなぜですか。
 高畑 私は早くから自然保護運動を始め、日本科学者会議北海道支部の風力問題研究会で風力発電の調査に携わっています
 同支部幹事会で設置が了承され研究会ができたのは2010年のことです。前年の09年には、小樽市の銭函海岸に風力発電施設の建設計画が持ち上がり、住民グループ「銭函海岸の自然を守る会」が活動を開始しています。銭函海岸は全国的にみても貴重な海岸であり私も調査に参加しました。 
 研究会では当初、風力発電全般と銭函海岸風力発電所計画の問題点に分けて調査研究を行ない、銭函の風車については環境影響評価書案を入手し検討しました。このアセス案によると、自然改変は最小限の8・7ha。掘削地を埋め戻して植栽しモニタリングを続けることで影響を抑えられると結論づけています。
 しかし、「北海道自然保護指針」と「石狩湾沿岸海岸保全基本計画」でこの海岸は保護すべきとされており、開発行為は容認すべきではないと研究会は判断しました。
 小樽市で行なわれた事業者の説明会では発電所計画が保護海岸で可能かどうかの計画アセスが必要だと訴え道庁にも交渉しましたが、建設を止めることはできませんでした。

 

(たかはた・しげる)1935 年東京都出身。59 年東京農工大学農学部卒業。農林省関東東山農業試験場、畜産試験場、北海道農業試験場勤務を経て農林水産省林業試験場北海道支場主任研究官として牧野の計画・施業の研究に取り組む。インドネシアの熱帯雨林研究センター、シリアの国際乾燥地農業研究センターなどでリモートセンシングによる土地利用研究にも従事。日本科学者会議北海道支部会員、同支部の風力発電問題研究会で風力発電の調査を続けている。86 歳。札幌市在住

「低周波空気振動に関する感覚実験」の論文

インドネシア勤務時代の体験を綴った著書『湧き上がる雲の下で』

(たかはた・しげる)1935 年東京都出身。59 年東京農工大学農学部卒業。農林省関東東山農業試験場、畜産試験場、北海道農業試験場勤務を経て農林水産省林業試験場北海道支場主任研究官として牧野の計画・施業の研究に取り組む。インドネシアの熱帯雨林研究センター、シリアの国際乾燥地農業研究センターなどでリモートセンシングによる土地利用研究にも従事。日本科学者会議北海道支部会員、同支部の風力発電問題研究会で風力発電の調査を続けている。86 歳。札幌市在住

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