地元紙・80年めの迷走〈続々〉
この声を聴け――
小さな声に耳を傾ける筈の報道機関は、すぐそばに拡がる声を捉えられなくなりつつある(札幌市中央区の北海道新聞本社)
道新問題で内部の不信増大中 「懇談会」記事は直前差し換え
まさかこんなに尾を引くとは思ってなかったんじゃないか――。現役記者の1人は、上層部の認識の甘さを指摘する。本年8月号から報告を続けている北海道新聞の新人記者逮捕問題は、否、それを受けた同社の一連の対応は、道内最大の報道機関が抱える病巣をあぶり出した。幹部職員らと現場との間の溝が埋まる兆しはなく、漏れ伝わる不信の声は今も絶えない。耳を塞ぐ幹部の足下で、その声は静かに拡がり続けている。
取材・文 小笠原 淳
1968 年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005 年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』
(リーダーズノート出版)。52 歳
「どんどん辞めていく…」
決意表明とも受け取れる編集局長の発言は、事後に書き加えられたものだった(9月14日付朝刊)
決意表明とも受け取れる編集局長の発言は、事後に書き加えられたものだった(9月14日付朝刊)
差し換えられた懇談原稿
その道新が朝刊の見開き全2面を使って「新聞評者懇談会」の模様を報じたのは、新人記者逮捕事件から3カ月が過ぎようとしていた9月14日のこと。同事件についての読者報告は、その日が2度めになる。記事は、同紙に「私の新聞評」を寄せる外部の評者4人と編集局幹部らとの懇談会の抄録だった。
この懇談記録が幹部の指示による複数回の差し換えを経て掲載に到ったいきさつは、社内でもあまり知られていないようだ。事情を知る関係者が明かす。
「座談会の記録ですから、直しが入るとしても事実誤認や誤字脱字などの訂正がほとんどで、参加者の発言を変える必要はない筈なんです。ところが紙面に掲載された差し換え版には、初稿になかった編集局長の発言などが書き足されてました」
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