深川市立病院の“内部告発者潰し”問題の行方
裏付けられた密談

2021年11月号

出入り業者と幹部職員の癒着問題に揺れる深川市立病院


市の調査報告書で確定した病院幹部の「チケット要求」

本年2月号から断続的に報じてきた北空知の医療を担う重要拠点、深川市立病院(開設者・山下貴史市長)の“内部告発者潰し”の続報だ。診療放射線科幹部と出入り業者との癒着を告発した同科の技師が事務部局へ異動を命じられた問題にからみ、今年3月の市議会で暴露された生々しい会話記録。それは野球観戦チケット供与を求める同科幹部と、それに対応する業者による院内での密談だった。以後、4カ月にわたりこの問題を調査していた深川市はどのような結論を出そうとしているのか──。(本誌編集長・工藤年泰)
 

「全容解明」を目指した市が最終報告前にアドバルーン


 プロ野球・日ハム戦の観戦チケットの授受などをめぐり、深川市立病院(203床)診療放射線科の幹部職員と同病院に出入りしている医療機器販売会社F社の営業担当がやりとりしていた問題を同市が調査していたことは既報の通りだ。
 この目的のため4月に市が設置した「深川市立病院診療放射線科に関する調査委員会」(以下調査委)は8月下旬、中間的な報告書をまとめ「チケットの授受についてはないものと考えられる」と結論づけた。またこのことに関連した医療機器の入札問題でも「不正なことはなかった」とした。
 調査委の報告を受けて山下貴史市長は、9月6日の記者懇談会で早々とこの結論を報道陣に明らかにし、「今回の調査結果を精査し、最終報告書を近く公表したい」と見通しを示した。
 この疑惑は昨年12月の市議会から取り上げられ、特に今年3月に開かれた第1回定例会では、病院を訪れたF社の営業担当者に露骨に観戦チケットをねだる診療放射線科のS課長、I課長補佐の音声データなどが北名照美市議(共産・10期)に暴露され、大きな問題に発展していた。
 当時の定例会で同市議が読み上げた録音内容をめぐって病院の吉田博昭事務部長は「そういう会話が交わされていたことは全く承知していなかった」と答えに窮した。山下市長は「調査が十分でなかった。(録音内容が)事実とすれば青天の霹靂という思いだ」と驚きを隠さず、市としてこの事案の全容を解明していくと約束した。
 その山下市長の号令で「全容の解明」を目指していた調査委が出した結論が先述の内容だったわけだ。
 だが、記者懇談会で山下市長が口にしていた「調査結果の精査」は荒れに荒れた。8月下旬から開かれた深川市議会の総務経済委員会や9月の定例会では、報告書の内容をめぐって先の北名市議や佐々木一夫市議(無所属・2期)などから疑義が噴出。これに対して市側は報告書の内容を繰り返すことに終始し、疑惑の幕引きを急ぐ姿を印象づける形となった。
 この中で記者は「㊙︎」と「未定稿」の但し書きが付された先の調査報告書を入手した。まずはこの内容を紐解きながら、調査委が出した結論を検証してみよう。
 調査委は本年4月23日に設置された。構成委員は次の7名だ。

委員長  早川雅典副市長
副委員長 三浦浩二企画総務部長
委員   石井洋文弁護士
委員   石川大記税理士
委員   西塚和章企画総務部次長
委員   武井博道総務課長
委員   小川稚嗣総務課主幹

 この中でヒアリングを担当したのは西塚次長と武井課長を除く5名とされている。副市長を筆頭に、庁内のコンプライアンス担当部署である企画総務部職員を中心にして弁護士1名と税理士1名が参画した形だが、外部の有識者などによる第三者委員会と異なり、いわゆる身内による内部調査の域を超えない体制と言える。
 設置後、調査委は4カ月の間に調査対象者への聞き取りなどを行ない合計7回の委員会を開催。8月23日までに先の報告書をまとめたというのがこれまでの流れだ。
 今回の調査では、北名市議が提示した一連の録音データが“本物”であることが確認され、本誌5月号で詳報した、野球観戦チケットの提供をめぐり2019年5月から7月にかけて診療放射線科幹部とF社社員が実際にメールや面談でやりとりしていたことが裏付けられたとしている。
 注目すべきひとつは、市側が今年3月まで「業者がコンプライアンス違反になりかねないことを理由に、チケットを提供できないことを謝りに来た」と答弁していた同年7月1日の出来事に関する調査委の見解だ。

 

この問題を追及している佐々木市議

この問題を追及している北名市議

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