“核のゴミ”レポートPART24
「応募検討」報道から1年、文献調査に抗する住民たちの思い
海と生きるか核に頼るか

2021年10月号

漁業や水産加工業が盛んな寿都町の漁港。サケの定置網やホタテの養殖、沿岸でのウニやカキの水揚げがあり、値の張るナマコで稼ぐ。不漁やコロナ禍の影響で課題も山積している


関ヶ原の寿都町長選を前に問われる住民意識

「核のごみ最終処分場 寿都町が調査応募検討」の見出しが打たれた新聞報道から1年が経過した。片岡春雄町長は「わたしの肌感覚では過半数の住民の賛成を得られている」と述べて応募に舵を切り、昨年秋からNUMO(原子力発電環境整備機構)が「文献調査」に着手。水産加工業の若手を中心に立ち上げた住民グループが住民投票条例の直接請求運動を進めた結果、曲折の末、次の「概要調査」前の投票を実施する条例が制定された──。10月26日には、この問題を最大の争点にして20年ぶりの町長選挙も行なわれる。1年の節目を機に事前調査に抗してきた住民たちの思いに耳を傾ける一方、6選をめざす片岡町長にインタビューした。(ルポライター・滝川 康治)
 

豊かな海を守る漁師の思いは「なぜ田舎に持ち込むのか!」

 
 寿都町の北東部に位置し、漁師を生業にする人が多い磯谷地区。夏場はナマコやカキ、ウニなどの海産物を採って生計を立てる。
「磯谷の漁師は10軒くらいだけど、ナマコ漁のみでも食えるんだ。単価は1キロ6千円くらいで、中国に輸出するものが多い。割り当てされた1カ月半のナマコの水揚げで食っていける。ありがたいことだよ」
 こう話す吉崎博さん(1959年、寿都町生まれ)は漁師の5代目。先祖は幕末か明治時代の初めに、ニシン漁のため北陸の能登半島から移り住んだ。1年を通してホタテの養殖を手がけるかたわら、4月下旬から10月にかけてコウナゴ、ナマコ、アワビの順に水揚げが続く。
 吉崎さんは密漁監視員でもある。今は警察も取り締まりに協力してくれるが、現場で密漁者と対峙する場面を幾度も経験。体を張り「持続可能な漁業」を営んできた。
「密漁の連中が(漁が認められた)区域の中に入ってくる。そいつらとやり合うわけだ。ナマコが(成長して)採れるまでに5年かかる。だから、仲間たちには『海を守ってきたから今がある』と言っているんだ」
 昨年8月中旬、寿都町の片岡春雄町長が“核のゴミ”最終処分地の選定に向けた「文献調査」の応募を検討している、との報道が駆けめぐる。全道の漁師仲間などから、「おまえらの町は何をやっているんだ!」「なんで調査を受け入れるんだ!」などと電話が相次いだ。
 

今年5月にUターン移住。家庭訪問を通して核ゴミ問題に対する思いを訴える田原誠さん

寿都湾は『海の自然学校』の適地」と話す黒松内町の高木晴光さん

(かたおか・はるお)1949 年、旭川市生まれ。71年に専修大学商学部を卒業後、首都圏の民間会社で働く。75年、寿都町役場に採用され、農政課長や保健衛生課長などを歴任。2001年11月の寿都町長選に出馬して初当選。無風選挙が続き、現在5期目。道立寿都病院の町立移管や全国初の町営の風力発電を推進した。子どもは独立し、妻の久美子さんと暮らす。第二の故郷・寿都に骨を埋めるつもで公務に携わってきた

中和興産
幕が開いた「杉澤劇場」

ヒグマ駆除裁判で逆転判決
全面敗訴にハンター動揺

自殺学生遺族陳述
江差パワハラ裁判で初弁論

自公大敗は本当に「政治とカネ」だけだったのか!?

吉崎さんの自宅前に停めた「密漁監視車」。活動に支障があるとの声を受け、人物写真の撮影は見送った

「道の駅」の駐車場に展示されている昔のニシン漁の船。往時の日本海側の港はにぎわいを見せた

町営の風力発電からは年間 3.5 億円の歳入がある

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寿都湾は『海の自然学校』の適地」と話す黒松内町の高木晴光さん

(かたおか・はるお)1949 年、旭川市生まれ。71年に専修大学商学部を卒業後、首都圏の民間会社で働く。75年、寿都町役場に採用され、農政課長や保健衛生課長などを歴任。2001年11月の寿都町長選に出馬して初当選。無風選挙が続き、現在5期目。道立寿都病院の町立移管や全国初の町営の風力発電を推進した。子どもは独立し、妻の久美子さんと暮らす。第二の故郷・寿都に骨を埋めるつもで公務に携わってきた

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