町有林に放置されている残渣水が入っていたプラスチックタンク
行政が手を染めた環境汚染
笹や木々が枯れ、周囲には異様な臭いが漂う。大きなプラスチック製タンクが不自然に置かれ、そこにパイプが取り付けられている──。廃棄物処理施設から出る廃液(残渣水)の不法投棄が行なわれていた虻田郡豊浦町高岡にある町有林の現場だ。なんとこの不法投棄をしていた当事者は、町役場だったというから洒落にならない。漁業系廃棄物から堆肥を作り農業への貢献を目指した豊浦町が、環境を汚染するというあってはならない行為に手を染めていた。現在、道警はこの不法投棄について廃棄物処理法違反の疑いで捜査を進めている。(佐久間康介)
噴火湾に面し、ホタテのまちとしても有名な豊浦町(村井洋一町長)では、ホタテ貝の養殖生産過程で発生する漁業系一般廃棄物(水産系雑物)を処理するため、平成16年に高岡地区にリサイクルセンター「ハザカプラント」を約3億5000万円で設置した。
ホタテ貝に付くザラボヤ類(※ホヤの仲間)や海藻類等の付着物を循環資源として攪拌発酵処理、水産系堆肥として農地還元するためだ。年間の処理量は約3000トン。処理施設は、100mあるレーンで25日間かけて攪拌発酵、堆肥化するものだ。
しかし、この施設は稼働当初からトラブル続き。悪臭があまりに強かったため、町議会では宮城県から「ハザカプラント」の関係者を呼び、現地で原因を追求したこともあった。しかし、その場でその関係者は背広を脱ぎ、こう言い放ったという。
「私はこの背広を着て飛行機に乗って帰ることができない。それほど酷い臭いだ。あれほど貝を入れてはいけないと言ったのに、あなた方は私の言ったことを全然守っていない。これでは発酵が促進されず臭くなるのは当然だ」
町は漁協に要請して対策を取ってきたが、当初の見込みより水産系雑物が2倍、3倍に膨れ上がってきた。雑物の内容も年によって違うことも増えてきた。最近多くなっているヨーロッパザラボヤは、ほとんどが水分で出来ており、発生する残渣水の量も2倍、3倍と増えていった。
処理施設の一時堆積場に置かれた水産系雑物から出る残渣水は、地下のタンク(容量約300トン)に一時保管される。水産系雑物の増加によって残渣水の量も年々増えていることに加え、最近になって地下タンクの残渣水を発酵途中の水産系雑物に散布するブロアーの機能が低下、十分な量を処理できなくなった。
残渣水が地下タンクに収まりきらず溢れ出る可能性が出てきたため、町は今年1月、漁業関係者と協議したうえで、礼文漁港内の排水桝に残渣水を投棄。しかし、臭いがきつく近隣住民などから苦情が続出し、町は投棄をストップせざるを得なくなったという。
その後、処理に窮した町は高岡地区の町有林の一角に残渣水を捨てる行動に出る。