一方的に辞任を表明した吉田学長(写真は2020年1月28日の記者会見時)
選考会議の「解任申し出」に注目集まる文科大臣の判断
国立大学法人旭川医科大学(以下旭川医大)の学長選考会議(西川祐司議長)は6月24日付けで萩生田光一文部科学大臣に吉田晃敏学長(69)について解任の申し出を行ない、本人が大学を去ることが確実視されている。就任以来14年にわたりトップに君臨し、近年における大学の迷走とガバナンスの機能不全を招いた“裸の王様”、吉田学長。現役教授らが立ち上げた「旭川医科大学の正常化を求める会」の解任請求から約4カ月。調査委の報告を踏まえ学長選考会議は開学以来、最も重い決断を下した──。(7月8日時点 本誌編集長・工藤年泰)
吉田学長に関する一連の疑惑は今年初めから噴き出した。新型コロナウイルス感染患者受け入れを進言した旭川医科大学病院の古川博之病院長(当時)に辞任を迫ったとする、いわゆるパワハラ発言を皮切りに、勤務実態がない中で滝川市立病院から多額の顧問料を受け取っていた問題、酩酊状態での言動などをメディアが次々に報道するに至った。
これらを受け学内では教授らによる「旭川医科大学の正常化を求める会」が、学外ではOBなどによる「吉田晃敏旭川医科大学学長のリコールを求める全国有志の会」が立ち上がり、2月末から3月にかけて同氏の辞職・解任を求める署名が大学に提出されたことは既報の通りだ。
中でも「正常化を求める会」が集めた署名が意向聴取対象者の過半数を超えていたことから学長選考会議(以下選考会議)は、学長解任規定に基づき、第三者による調査委員会(札幌弁護士会所属の3名の弁護士)に委嘱する形で3月28日から調査を開始。2カ月間の調査を踏まえ5月28日に選考会議に報告書を提出するに至った。
これに対して吉田学長は解任請求審議の進め方に疑義を唱えて抵抗していたが、6月18日に予定されていた弁明の機会を突如放棄して辞表を文科大臣に送付。代理人を通して「受理された」と一方的に宣言した。だが選考会議は予定通り審議を続け同22日に解任申し出を決議、同24日付けで文科大臣に通達したというのがこれまでの流れだ。
6月25日午後、取材に応じた旭川医大の長谷部直幸教授(心血管再生・先端医療開発講座特任教授)は、選考会議の今回の決議について次のように評価した。
「我々(旭川医科大学の正常化を求める会)の署名集めは選考会議を動かすためにやったことだが、そのほかにも多くのOB、市民、患者が同様の主旨の署名を大学側に寄せてくれた。そういう意味で今回、選考会議が解任の申し出を決めたのは非常に意義のある賢明な判断だと思う」
そのうえで長谷部教授は、吉田学長が弁明を放棄して辞表を提出したことについて「選考会議を愚弄するもの」として厳しく批判した。