道警不祥事から考える<51>
剣士の“余罪”

2021年07月号

元巡査長は車でコンビニを出る際に別の車と接触、そのまま逃走して機動隊の寮に戻ったという(札幌市北区)

酒気帯び・当て逃げで懲戒免。元巡査長に未発表の人身事故

酒気帯び運転で事故を起こし、現場から逃走したのは、現職警察官だった。剣道の腕を買われて北海道警察に職を得た彼は6月上旬、若くしてその職場を去ることになる。課された「免職」という制裁は警察庁が定める指針に適った処分といえるが、報じられなかったもう1つの不祥事ではその人は処分の対象とならず、報道発表も免がれていた。1月上旬に札幌市内で起こしたその事故を、本人は今も憶えているだろうか。
 

寮で痛飲、事故後に逃走

 
 札幌市の会社員男性(32)はそのニュースに接し、苦笑するしかなかったという。新聞・テレビで「容疑者」と伝えられている人物が、本年1月に巻き込まれたトラブルの相手だったためだ。
「あんなので怪我するわけがないと言われたり、ずいぶん揉めました」
 代理人を介したやり取りが一段落したのは、4カ月が過ぎた5月下旬。長かった交渉は決して納得できる結果には終わらなかったが「早くこの件から離れたい」との一心で先方の言い分を一定程度受け入れざるを得なかった。
 トラブルの相手は、北海道警察に勤める若手警察官。その肩書きに「元」の1字が加わったのは、ごく最近のことだ。勤務2年あまりの巡査長が職を失う原因となったのは先の男性とのトラブルではなく、その後に犯した交通違反だった。
 

 5月10日未明、札幌市北区。
 地区内の緑道に面したコンビニエンスストアで、夜勤の店員が不意の来店客に「警察を呼んで」と頼まれた。店外駐車場で車同士の接触事故があり、加害者がそのまま逃走してしまったのだという。
 通報を受けた警察は店のカメラ映像などから逃走車を割り出し、事故から半日を経た午後1時過ぎに容疑者を逮捕、同3時半に事案を報道発表した。逮捕されたのは、道警機動隊に所属する男性巡査長(24)。のちに当て逃げの疑いで捜査を受けることになるが、この時の逮捕容疑は酒気帯び運転だった。事件を発表した監察官室(職員の不祥事などを監督する部署)は同日、髙田 重栄(こうだ しげよし)室長名で次のコメントを発表している。
《警察官として言語道断の行為であり、捜査結果を踏まえて厳正に対処いたします》
 

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