緊急寄稿【1】いま、ウイグルの声に耳を
中国による民族虐殺の実態

2021年07月号

トゥール・ムハメット氏 1963年東トルキスタン(中国・新疆ウイグル自治区)ボルタラ市生まれ。北京農業大学(現在の中国農業大学)卒業後、85年から94年まで新疆農業大学で講師を務める。94年に訪日し九州大学に留学。留学中に中国で秘密扱いになっている天安門事件(89年)を知り、97年に新疆で起きた中国によるウイグル人弾圧事件を契機に人権活動家として歩み始める。2015年日本ウイグル連盟会長に就任。新疆にいる娘と連絡が取れない状態にある。農学博士。58歳

「漢民族単一国家」を目論む中共の野望
トゥール・ムハメット(日本ウイグル連盟会長)

香港での民主派弾圧が国際社会から非難を受けている中国だが、さらに深刻なのが新疆ウイグル自治区にけるジェノサイド、ウイグルの人々に対する民族虐殺問題だ。今年になってからアメリカをはじめとする欧米諸国が近年における中国の強制収容所政策を「人類に対する犯罪」と公式に表明したが、この問題に我が国は及び腰と言わざるを得ない状況だ。94年に訪日し、現在人権活動家として中国共産党の暴挙を告発し続けている日本ウイグル連盟会長、トゥール・ムハメット氏の緊急寄稿を今月からお届けする。いま、ウイグルの声に耳を──。
 

ウイグル同胞の苦難を伝えたい

 
 私はいま、ウイグル同胞のひとりとして北海道の皆さん(道民、地方自治体、地方議会)に強く訴えかけたいと思います。それは、新疆ウイグル自治区と呼ばれる我が故郷、東トルキスタンが置かれている苦難と中国共産党が目論む危険な野望についてです。これらのことは、決して北海道と無関係ではありません。
 2021年1月19日、アメリカ合衆国のマイク・ポンペオ国務長官(当時)は2016年秋から始まった中国当局のウイグル人に対する強制収容政策について、それらの行為は21世紀における人類に対する犯罪であるとの政府声明を発しました。1948年12月9日の国連第3回総会で採択されたジェノサイド条約に照らしてウイグル人に対するジェノサイド(民族大量虐殺)であると認定したのです。
 このアメリカの動きに続いてカナダ下院は同2月22日に動議を採択し、中国当局が国際法上の犯罪であるジェノサイドを行なっていると批判し、カナダ政府に対し2022年の北京冬季五輪の開催地を他の国に変更するよう国際オリンピック委員会(IOC)に働きかけることを求めました。
 さらにEUでは、同月25日オランダ議会が動議を可決し、欧州初の「ジェノサイド認定」を表明しました。さらにEU議会は3月22日開いた外相理事会で、中国のウイグル人に対する不当な扱いが人権侵害にあたるとして30年ぶりに中国当局者らへの制裁を採択しました。
 中国はEUのこの制裁に反発し、EU議会議員に報復制裁を課しましたが、さらに同議会は5月20日の本会議で、中国と昨年末に基本合意した投資協定の承認手続きを凍結する決議を賛成599反対30で採択しました。このように国際社会ではウイグル人ジェノサイド問題で足並みが揃いつつあり、中国に対する圧力を強めています。
 筆者は、今から8年前の2013年6月22日、札幌市内で開かれた「日本・ウイグル 自由のための連帯フォーラム」に当時の世界ウイグル会議総裁ラビア・カデーィル女史と共に参加し、その翌日に貴誌の工藤年泰編集長によるラビア女史へのインタビューで通訳を担当しました。
 当時、札幌における講演やインタビューでラビア女史が中国当局の動きとして特に強調していたのは、ウイグル人未婚女性に対する中国本土強制移住、ウイグル語の使用禁止、テロ対策の名目で行なわれているイスラム信仰への厳しい締め付けでした。この時のインタビューは「いまこそ日本に知ってほしいウイグルの危機と民族の働哭」というタイトルで貴誌2013年8月号に掲載されています。
 当時のインタビューでラビア女史は、習近平が中国共産党のトップになってから「中国政府は明らかに以前とは異なる形でウイグル人の抑圧を実施し始めており、我々は民族存亡の危機に直面しています」と、目前に迫ってきた脅威に対する警戒を表明していました。
 その3年後に、まさに習近平はウイグル人に対してジェノサイドを敢行することとなりました。当時のラビア女史の危機意識から言えば、この事態は予想されていたとも言えます。
 ところが、国際社会で高まりつつある中国非難の動きとは対照的に日本ではこの問題に関して動きが鈍く、大手マスメディアの報道も乏しいと言わざるを得ません。21世紀における中国の「アウシュビッツを遥かに超える行為」は周知されているとは言えず、政財界では従来からの中国への忖度が罷り通っています。「日中経済協力」という枠組みを越えられず、日本の国際的な地位と名誉に相応しくない事態が続いており、このような状況は北海道も同じであると思います。
 

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ラビア・カデーィル総裁のインタビューを掲載した本誌2013年8月号

中国当局が「職業訓練所」と呼ぶ強制収容所に収監されたウイグル人たち(トゥール・ムハメット氏提供)

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