紋別港に陸揚げされた「第八北幸丸」(紋別漁協提供)
「もう海も自分の船も見たくない。漁師として廃業を考えている」
ロシアのカニ運搬船「アムール」(662トン)に衝突され、乗組員3人(機関長1人・甲板員2人)が死亡した紋別漁協の毛ガニ漁船「第八北幸丸」(9・7トン)の吉岡照由船長(63)は、事故から2日後の5月28日午前、記者の取材に悲痛な声を絞り出した。
それはあっという間の出来事だった。5月26日午前4時頃に出港した紋別漁協の毛ガニ部会の船団(6隻・神敏雄船団長)は1時間ほどで紋別港北東約23キロの沖合に着くと、いつものように操業を開始。出港当時とはうって変わり辺りに濃霧が立ち込める中、第八北幸丸は甲板員がロープに繋いだカニ籠を海中に降ろす作業を始めていた。
「衝突された時、自分は操舵室の中に居たが、霧の中からいきなり大きな船が現れ次の瞬間にぶつかっていたという感じだ。大きな衝撃とともに船が横倒しになり、夢中で操舵室の扉を開けて外に出たが、そのまま海に投げ出されてしまった。浮き上がると、近くにひっくり返った自分の船があったので船底に這い上がった。