再生可能エネルギーを問い直す【2】
「脱炭素」の掛け声のなかで置き去りにされる健康被害

2021年05月号

銭函海岸に建つ風力発電施設

毛無山の風力発電計画にも危惧の声
 
「再生可能エネルギーを促すため国立公園内の規制緩和をする」。小泉進次郎環境相が全国紙のインタビューで驚きの方針を打ち出したのは昨年秋。続いて国が風力発電を対象とした環境影響評価(環境アセスメント)制度の規制緩和を決めるなど、ここに来て脱炭素社会に向け国の再エネ推進が前のめりとなっている。風車が発する低周波が健康被害をもたらすなどの問題は忘れ去られてしまったのか。全国各地における住民活動の動きから現状を探った。(武智敦子)
 

風車休止後8割が症状改善

 
 人間の可聴域は20ヘルツから20万ヘルツ。聞こえにくい100ヘルツ以下は低周波、さらに20ヘルツ以下は聞き取ることが不能な超低周波と呼ばれる。低周波音は風力発電の風車や航空機、ボイラー、トンネルなどから発生し、イライラや頭痛、耳鳴りなどを引き起こすという。透過性が強いため、防音装置などは効果がなく逆に症状が悪化するとも言われるからやっかいだ。
 二酸化炭素を排出しない、クリーンな電力として注目されてきた風力発電だが、大型化が進むに従い低周波音による健康被害がクローズアップされている。
 静岡県東伊豆の別荘地では、2007年12月から1500KWの大型風車10基が稼働。その直後から住民が「不眠」「イライラ」「血圧上昇」などを訴えていたことが、地元自治会の独自調査で明らかになっている。09年7月に起きたブレード(羽)の落下事故で全基の運転が停止されたことを受け、この自治会は風車から500m~1キロ以内の住民の健康被害の改善状況を調査。住民77人中約8割が改善されたとする回答を得た。
「頭を圧迫するか破壊される感覚。(風力発電は)人間として生きる権利を奪うもの」「低周波、電波、電気系統の刺激に敏感になり困っている。大型の空調機の傍に長くいると、足がしびれたようなピリピリした感覚が起き困っている」「東伊豆を離れると血圧は明らかに下がり出した」などと、調査報告書には低周波による身体症状の変化も細かく記載されている。
 自治会は事業者や東伊豆町と話し合い、夜間に住宅付近の風車の運転を停止するなどの協定を結んだが、低周波の苦痛に耐えられず転居した住民もいたという。
 

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