告発・絶望の学府
「教える価値がない」

2021年05月号

この春にわかに注目を浴びることになった公立専修校には、知られざる負の伝統があった(檜山管内江差町の北海道立江差高等看護学院)

行く道は留年、休学、中退… 道南の看護校で“学生潰し”か

本号が店頭に並ぶころ、事態はいくらか好転しているだろうか――。年度明けと前後して拡がり始めた告発の声は、ようやく行政の重い腰を上げさせつつある。だが、これまで多くの若者たちが強いられた理不尽はあまりに大きく、摘まれた芽はあまりに多かった。人の命を救う医療職にあって、道南・江差町の看護教員のみはその埒外に置かれているらしい。未来の人材を預かる筈の学舎は、若者たちをどこに導こうとしていたのか。(取材・文 小笠原 淳)
 

日々続く理不尽に諦念「こういうもんなんだ」

 この春から最寄りの公共職業安定所に通い始めたその人は、本来ならば実家から70㎞ほど離れた街で今も学生生活を続けている筈だった。
「決してやめたくはなかったんですが、実習の最中に『このままこの学校にいたらおかしくなる』と思ってしまって」
 函館市の眞田咲花(さきか)さん(20)は昨年4月、檜山管内江差町の看護師養成校・北海道立江差高等看護学院(伊東則彦学院長)に入学した。看護職を志したのは、もともと「人の役に立つ仕事を」との思いがあったため。同居する父親(53)も賛成し、公立で比較的費用のかからないその学校を選んだ。
 定員40人の専修校で、その年の入学者数は19人。うち眞田さんを含む10人が今春、2年生に進級できなかった。留年、休学、もしくは退学を余儀なくされたためだ。出身者の1人(23)は「あの学校ではそれが普通」と、こともなげに言う。「無事に卒業できる同期は数えるほどしかいない」とも。
 なぜそうなるのか。眞田さんが実習中の体験を書き留めた記録を紐解けば、その理由が見えてくる(※原文の人名を修整し、適宜要約)。
《E先生が突然私の左肩を強く引っ張り、私は床頭台にぶつかりそうになった。なんとか避け、その場に尻もちをついた》
《ナースステーションで物品を片付けていた時、授業で習った通りのしまい方をすると「変なしまい方しないで!」と怒られた》
《「基礎看護学実習Ⅰ」では車イスを押すことができない決まりだが、S先生に「なんで押してないの?」と言われ、本来行ってはいけない援助をやってしまった》
 ある教員は自己学習を「ただの手の運動」と冷罵し、やり方を尋ねても「自分で考えて」と一蹴、考えをまとめて提出すると「暗記では駄目」と突き放した。別の教員には記憶にない失敗を反省文に書くよう命じられ、泣きながら一日がかりで“やっていないこと”を創造し続けた。教わっていないことを訊いただけで「上から目線」と叱られたこともある。何をどうすればよいのかわからない局面が次第に増え、前日に指導された内容が翌日にはまったく変わることも稀ではなくなった。たびたびの食欲不振と不眠で、1年の間に体重が10㎏減った。
「私もよく泣きましたが、毎日のように泣いてる子もいました。口癖のように『死にたい』と言う人もいて、でもそれが当たり前というか、『看護学校ってこういうもんなんだ』と思わされていたような気がします」
 

教員たちはこぞってハラスメントを否定、道の調査には「コミュニケーション不足」などと抗弁している

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掲げられる理念が現場の教育に反映されているとは言い難い(学院パンフレット)

初めての保護者向け説明会は冒頭部分のみ報道公開され、議事は事実上密室で進められた(4月7日夕、江差高等看護学院「多目的ホール」)

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