迷走する旭川医大─ガバナンス崩壊の実態
教授にしてやったのに

2021年03月号

吉田学長(中央)と古川元病院長(右)はかつては蜜月だったと言われる。※写真は一連の教授不祥事を受けて開かれた昨年の記者会見(2020年1月28日午前11時過ぎ、旭川医大管理棟2階)

独裁人事で墓穴を掘った吉田学長の“誤算と誤謬”

国立大学法人旭川医科大学(以下旭川医大)の吉田晃敏学長(68)の暴走が止まらない。古川博之病院長(当時)のコロナ患者受け入れにストップをかけ、クラスターが発生した市内病院には「なくなるしかない」と暴言。本人のパワハラ発言を受けて文科省が調査に乗り出す中で、今度は古川病院長を解任する荒技に出た。同大学元助教授らが吉田学長のリコールを求め、患者や教員から訴訟も相次ぐ異例の事態。この一連の混乱の背景には14年もの長期政権の中、独裁人事で組織のガバナンスを破壊してきた吉田学長の大きな誤謬があるのではないか。(本誌編集長・工藤年泰)
 

1年前に報じていた論文盗用

 
 2019年秋以降、旭川医大で金銭がらみの教授不祥事が立て続けに明らかになり、世間を騒がせたことをご記憶の読者も少なくないだろう。この中で本誌は、脳神経外科学講座元教授(2019年3月に退職)の強制猥褻疑惑と論文盗用問題を独自に報じた(2020年2・3月号で前者、3月号で後者を掲載)。
 取材当時、前者の強制猥褻疑惑については、刑事事件として扱われなかったことなどを理由に公表せず、懲戒処分も当該教授に科さなかった旭川医大だったが、後者の論文盗用については今頃になってアナウンスに及んだ。
 同医大は年が明けた1月8日、大学在籍中に元教授が学会誌に投稿した論文に、他の研究者の論文などで使われていた写真を許可を得ずに使用していたことをホームページで公表。メディア各社はこのことをニュースとしていっせいに流した。
 だが、当の学会では今から3年以上前の2017年10月に対象論文の取り下げ措置を行ない、翌18年5月に当時はまだ教授職にあった本人に対して1年間の投稿禁止を言い渡している。本誌20年3月号の記事は、学会のこのような対応を踏まえ関係者に取材。各自の証言を交えながら盗用の全体像を伝えたものだった。
 それからちょうど丸1年。今回の旭川医大の発表は遅きに失した感が否めないうえ当該教授の所属講座や氏名は明かされず、各メディアの扱いもいわゆる発表内容をなぞる「玄関ネタ」の域を出ていない。
 現在取り沙汰されている吉田学長のガバナンスの欠如はすでに数年前から顕著だったようだ。教授への指導力が問われたこの論文盗用事件には、それが如実に表れている。
 

元教授が論文を投稿した「脳神経外科ジャーナル2017年4月号」(画像は版元の三輪出版のHPより)

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