“核のゴミ”レポートPART17「文献調査」に抗して地元・周辺町村で広がる住民運動
目指すは、議会解散

2021年01月号

泊原発を望む岩内漁港の朝。稼働前の1983年には500人近かった岩内郡漁協の組合員数は60人(2017年)にまで減った。逆に、原発から離れた寿都町や島牧村の水産業は堅調だ。「原発マネー」に頼ると一次産業は衰退する

寿都周辺の町村議会では「拒否条例」制定の動きも
 
NUMOによる“核のゴミ”処分場の建設に向けた「文献調査」の準備が後志管内の寿都町と神恵内村で始まった。地質条件などの“文献”はすでに収集されており、2年間の調査期間は処分事業のPRや地元・周辺対策に充てられるだろう。寿都町では“肌感覚”によって応募を決めた片岡春雄町長のやり方に反発する声も根強く、11月下旬には町民有志が「寿都の闇を正すリコールの会(仮称)」を立ち上げ、町長の独断専行を容認した町議会の解散請求に取り組む方針を決定。年明けに運動を本格化させる。周辺町村の議会では「拒否条例」を制定する動きもあり、徐々に包囲網が広がる。後志管内の一次産業の実態に明るい岩内町議の話も交え、住民運動の一端を紹介する。(ルポライター・滝川 康治)
 

町長リコールも模索したが…住民有志は議会の解散請求へ

 
 11月27日夜、寿都町内の会館に10数人の町民有志が集まり、「地方自治法」第76条に基づき町議会(定数9)の解散を求める直接請求(リコール)の運動に取り組む方針を決めた。9月現在の有権者数は2500人余り。3分の1の署名数(8百人余り)が集まると直接請求が受理され、住民投票で過半数の有権者が賛成すると町議会は解散となる。
 片岡春雄町長による「文献調査」の応募表明(10月8日)の直前、応募の賛否を問う住民投票条例の直接請求が行なわれた(先月号を参照)。しかし、11月13日の町議会で条例案が否決されたため、町民有志が町長リコールを模索し、80年代初め、原発推進に走る町長のリコール署名(不成立)に取り組んだ共和町の住民を招いて話を聞くなど内部検討を重ねた。そこでは、対立候補の名前も上がったが、3分の1を超える署名を集め、町を二分する町長リコールは難しいとの結論に至った。21年秋には次の町長選もある。
 また「文献調査」関連の議事録を非公開にしたり、町長の独走を十分にチェックできない町議会の実態があるため、「町長リコールが成功したとしても、現在の議会構成では文献調査を止めることはできない」と判断したという。そこで、「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」の共同代表も務める吉野寿彦さんら数人が議会リコールの署名代表者になり、年明けから署名集めを本格化させることになった。
 

(さとう・ひでゆき)1950年、後志管内岩内町生まれ。法政大学社会学部を卒業した76年、岩内の旧・島野農協に就職。共和農協の参事や常務理事など歴任し、2010年に退職。翌年に岩内町議町に初当選し、現在3期目。「岩内原発問題研究会」と「後志・原発とエネルギーを考える会」の事務局長も務める。岩内町在住

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「幌延問題」をめぐり豊富町で推進町議のリコールが成立し、拍手する地元住民(90年11月)。道内の〝核のゴミ〟関連リコール運動は寿都が2例目になる

寿都町は風力発電事業を手がけ全国のモデル事例になった。「文献調査」と洋上風力構想は密接な関係がある

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(さとう・ひでゆき)1950年、後志管内岩内町生まれ。法政大学社会学部を卒業した76年、岩内の旧・島野農協に就職。共和農協の参事や常務理事など歴任し、2010年に退職。翌年に岩内町議町に初当選し、現在3期目。「岩内原発問題研究会」と「後志・原発とエネルギーを考える会」の事務局長も務める。岩内町在住

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