道警不祥事から考える〈47〉 
「被告人は警察官でした」

2021年01月号

ストーカー行為の主は、ついに犯行の理由を語ることがなかった(11月27日午前、函館地方裁判所前)

ストーカー事件で被害者陳述。元巡査部長に求刑2年6カ月

前々号の誌面から報告を続けてきた現職警察官によるストーカー・わいせつ未遂事件の審理が終わり、論告公判の法廷で被害女性の陳述が読み上げられた。癒えない傷を訴える声を受け、被告人の元警察官は改めて頭を下げたが、検察は「極めて悪質で結果は重大」と、懲役2年6カ月を求刑。道警ではこの間、別の警察官による大麻所持事件が発覚するなど、2020年後半は深刻な不祥事が続く下半期となった。(取材・文=小笠原 淳)
 

取り締まり機に、4年間

 
 11月27日午前。
 函館地方裁判所の法廷(日野進司裁判官)で、長身の被告人(41)が神妙な面持ちで俯き続ける。対面に立つ遮蔽板の奥では、彼が起こしたストーカー規制法違反・強制わいせつ未遂事件の被害者の陳述が、代理人の声で読み上げられていた。
「事件があってから、街を歩いていても『みんな自分に向かってきて自分を襲うのではないか』と、恐怖を感じるようになりました」
 被害者は、渡島管内に住む30歳代の女性。被告人との出会いは4年前、車で速度違反をしたことがきっかけだった。
「被告人は、警察官でした。その警察官に、私は襲われました」
 陳述にいう通り、その人にストーカー行為をはたらき続けたのは函館西警察署で交通取り締まりにあたっていた男性巡査部長(当時)。先の速度違反で被害女性に違反切符を交付し、その際に得た個人情報を利用して女性へのつきまといを重ねた。
 一時的な中断を挿んで4年間ほど続いたストーカー行為の結果、元巡査部長は女性の肩を掴むなどの暴行容疑で2020年8月に逮捕、強制わいせつ未遂で起訴され、翌9月にはストーカー規制法違反で追起訴された。この間、北海道警察は彼を「停職1カ月」の懲戒処分とし、本人はほどなく辞職、同居していた妻子と別れ、函館のアパートを引き払って札幌市内の実家に身を寄せることになった。9月下旬に始まった自身の事件の公判では、検察官や裁判官から犯行の理由を問われて「自分でもよくわからない」と繰り返している(本誌12月号既報)。
 11月の論告公判では、この「わからない」に対して被害女性から強い憤りが示された。
「事件から裁判までは、3カ月ありました。気持ちを整理して、裁判で心の裡をきちんと説明できるようにしておくことぐらい、できた筈です。あなたの行動を理解できず、混乱しているのはこちらです。自分で混乱していると言って逃げるのはやめてください」
 2つの仕事に携わっていた女性は事件後、うち1つを辞めざるを得なくなり、ストレスで脳が萎縮して長期の通院が必要と診断された。時と場所を選ばず過呼吸になり、実家にいてもパニックに陥ることがあるという。
「安心できる筈の実家も、事件を思い出す不安要素になってしまいました。私にはもう、どこにも安らげる場所がありません」
 

強制わいせつ未遂の現場は被害女性の自宅敷地内だった(北海道警察が一部開示した『事件指揮簿兼犯罪事件処理簿』)

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