総長解任と次期総長選びで揺れる北海道大学
名和総長解任の真相と北大総長選の虚々実々

2020年9月号

総長室のある北大事務局本館(札幌市北区)

名和豊春総長(66)解任で揺れる国立大学法人北海道大学。選考会議が選択したのは同氏の辞職ではなく解任。このことで北大が得たものは果たして何だったのか。自浄作用が学内に機能しているというのであれば、むしろ自発的に職を辞す環境を作った方が得策だったのではないか。大学内外で解任をめぐる波紋が収まらない中、北大は次期総長選の真っ只中にある。解任騒動の汚名を払拭する意味合いもある次期総長選びだが、大学経営をめぐる利権が背後にちらつき、生臭さは拭えない。北大は威信を回復できるだろうか。(佐久間康介)
 

総長就任時の高評価が1年経ず不適格の評に

 
 以前、北大総長の任期は4年とされていたが、選挙を経てさらに2年間務めることができ、最長6年間が歴代総長の在任期間だった。この20年間を見ても丹保憲仁氏、中村睦男氏、佐伯浩氏と6年在任が踏襲されてきた。その後、2013年4月に就任した山口佳三氏も4年間の任期を終え17年に選挙が行なわれた。いつもなら対抗馬が出ても現職が勝つのが常だが、このときは違った。対抗馬が6人立ち、その中の1人が名和氏だった。
 山口氏は人格識見が高く評判も良かったが、そのころ文科省の大学運営の補助金削減が具体化しており、選挙前に同氏は教職員の報酬を14%削減する案を提示。このことで学内に不満が燻っていた。
 そんな時だっただけに最初の投票で山口氏は過半数に届かず、2回目も同様の結果に。このため当時の総長選考会議(議長・石山喬日本軽金属ホールディングス元会長)は、山口氏と名和氏の上位2氏の選考を実施。その結果1票差で名和氏に決まった経緯がある。
 この時の選考会議では、「4年+2年」ではじっくりと大学経営ができないとして1期6年に決めたばかり。名和氏が任期6年でスタートした最初の総長だった。
 同氏が選ばれた背景には、旧秩父セメントで働いた経験があり、工学部出身ということで経済界を中心に資金を集めることができるのでは、という内部の台所事情も影響していたようだ。山口氏は数学が専門で、経済界人脈も乏しく集金力では見劣りがする。そういう点で名和氏に歩があったのも事実だ。
 ともあれ、2017年4月に名和総長が誕生した。「話もうまいし頭脳明晰を感じさせ、総長に値する人物と、そのころの評判は良かった」(関係者)。ところが、1年を経ずに問題が浮上する。いわゆるパワハラである。理事や副学長が口頭で注意したが、その後も収まらず、大学構内のコンビニ店舗誘致や電力調達では入札を経ずに独断で決定するなど、荒っぽい手腕が随所で顕在化。当時を知る関係者は、「“総長だからこれくらいは許されるだろう”という思い上がった言動が明らかに目立ち始めた」と話す。
 

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