行き交う通行人にススキノの窮状を訴える伊藤淳一さん(7月17日午後6時過ぎ、札幌市中央区の旧ススキノラフィラ前)
札幌市が1億5千万円を増額。新たに500事業者を助成へ
札幌市は、いわゆる「ススキノ助成金」の予算を倍増させることを正式に決めた。すでに執行している1億5千万円と同額を新たに措置することとし、8月中旬の申請再受付に向け、事業主体の一般社団法人すすきの観光協会(本部札幌・大島昌充会長、以下協会)と共に準備に入っている。特筆すべきは問題とされていた「9団体優先」の条件が撤廃されること。これまでの流れを踏まえ、この助成金事業の新たな展開を報告する。(本誌編集長・工藤年泰)
国の臨時交付金を活用する方法で札幌市が「繁華街感染防止対策費」として総額1億5千万円の補正予算を組み、この補助金を使い事業主体の協会がススキノ地区の飲食店などに助成金を交付する取り組みが6月から始まったことは既報の通りだ。
市と協会が作成したマニュアルに基づく感染防止対策(30項目)の実施を条件として、1事業者当たり25万円を助成する仕組みである。
だがこの事業は、東北以北最大の歓楽街にとって必ずしも干天の慈雨とはならなかった。
その理由はふたつある。ひとつは、ススキノ地区には飲食店など約3800あまりの店が営業しているとされるが、これに対し交付枠が500件しかなかったこと。もうひとつが助成対象が協会など業界9団体に加盟している事業者に限定されたことだ。
先月号で詳報したように、このような制度運営になったことに多くの事業者が反発。協会や札幌市に抗議が殺到する事態となった。例えば、次のような動きも──。
関連記事が載った本誌8月号が発売された2日後の7月17日午後6時過ぎ。閉店したススキノラフィラ前(札幌市中央区)で「守ろう!ススキノ」と染め抜かれた幟を傍らに、拡声器で窮状を訴えていたのは、ススキノでパブスナックを35年にわたり営む伊藤淳一さん(61)だ。
5月末から通行人を相手にひとりで始めた街宣と署名集めは、この日で4回目。回を追うごとに「手伝わせて」と賛同者が増え、何人かが幟を持ったり署名集めをサポートしてくれるようになったという。
この日、伊藤さんが訴えていたのは、ほかならぬ「ススキノ助成金」のことだ。交付対象が一部の飲食店に限定された理不尽さに黙っていられなくなったという。
「道が緊急事態宣言を出してから、ススキノはしばらく地獄のようでした。それを耐え忍んできたところに、この助成金の話。同業者仲間で良かったねと話していたら、協会などに加盟しているのが条件だとなった。でも今回の原資は国のお金、つまり我々が払ってきた税金でしょう。こんな不公平で馬鹿な話がありますか」(伊藤さん)
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今回の予算増額と運営面の変更は、このような指摘を各方面から受けての結果だったと言っていい。