首相批判封殺の波紋⑩
闘い、なお終わらず

2020年8月号

大通地区で大杉雅栄さんの排除にあたった警察官の中に、警視庁警護課の職員が含まれていたという(昨年7月15日夕、札幌市中央区)=「ヤジポイ」チーム提供の動画から

警官不起訴に当事者が異議。排除にSP動員、国賠で判明

昨年夏に札幌で起きた出来事は、今のところ「事件」にも「不祥事」にもなっていない。警察が一般市民を拘束し、為政者への批判を封じる――。次々と掘り起こされた写真や映像に残る事実を前に、現場の警察官は誰一人として処罰されず、懲戒処分も受けなかった。表現の自由を奪われた当事者たちは、季節が一めぐりした今もそれを問う声を上げ続けている。首相演説野次排除問題に、2度めの夏が訪れた。(取材・文 小笠原 淳)
 

報告書作成、本年5月。警視庁SP配置の記録

 
 警察官の報告書が作成されたのは、10カ月後のことだった――。
 参議院議員選挙期間中の昨年7月15日に札幌市で起きた、首相演説野次排除事件。与党系候補の応援演説に立った安倍晋三総理大臣に「辞めろ」「帰れ」と野次を飛ばした人など少なくとも9人が、現場の警察官に“排除”された。本誌では昨年9月号以降の誌面で、その後の賠償訴訟や刑事告訴、地元議会での警察答弁などを伝えてきたところだ。
 排除の被害を訴える人たちが北海道警察に損害賠償を求めた裁判の第3回口頭弁論が設けられたのは、前号発売直後の6月15日午後。前回の弁論では被告の道警が「ヤフーコメント」を証拠提出して排除の正当性を主張したことが話題となったが(本誌5月号既報)、当事者ブログなどでこれを批判していた原告に対し、道警は今回、現場警察官の「報告書」を提出してきたという。
 札幌地方裁判所(廣瀬孝裁判長)での弁論後、原告代理人の小野寺信勝弁護士(札幌弁護士会)は次のように報告した。
「今回、ヤフコメは提出されませんでした。出てきたのは警察官の報告書なんですが、作成日が今年の5月になってるんですね」
 現場の警察官たちは、排除から10カ月が過ぎてようやく報告書を作成したのだという。
「5月」は、前回弁論の2カ月後。これを受けてから報告をまとめ始めたのはあきらかで、原告代理人らは「裁判のために作った」疑いを指摘している。
 

道警は「プライバシー」などを理由に公文書の〝海苔弁〟開示を正当化、記者の不服申し立てにもなお抗弁を重ねている(6月9日付『弁明書』)

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桃井希生さんの周囲にいるのは警察官のみで、「密集」した「聴衆」との間で「事故」を起こすおそれは窺えない(昨年7月15日夕、JR札幌駅前)=読者提供の動画から

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