小樽市保健所で起きた「PCRオール陽性」騒動
誤判定の原因は空気汚染か。財政難で換気設備が老朽化

2020年7月号

築50年近い小樽市保健所(市内富岡)

小樽市保健所(貞本晃一所長)で4月中旬、新型コロナウイルスの感染を調べる「PCR検査」の判定結果が全て「陽性」となるトラブルが起き、検査を一時中断する事態が発生した。検査室の換気設備の不具合で空気が汚染され、判定結果に影響を与えた可能性が高いという。応急措置として空気清浄器などを導入し、5月13日に検査を再開したが、クリーンであるべきはずの検査室の環境が整っていない異常事態。そこから見えてくるのは財政難にあえぐ地方行政の姿だ。(武智敦子)
 

換気設備が機能不全

 
「おかしい──」。4月20日、試験検査担当・葛間明美主幹はPCRの判定結果に唖然とした。十数件の検体全てが陽性と判定されていたからだ。何らかの原因で偽陽性が出たのではないか。検査をやり直したが、結果はほぼ同じだった。
 微量の検体からウイルスの遺伝子を増幅し、感染の有無を調べるPCR検査は正しく判定する精度が約7割とされ、国は原則1人につき喀痰と咽頭拭い液の各2件、計4検体を検査するよう指導している。
 同保健所は3月12日から新型コロナウイルスのPCR検査を開始。検査室では採取した検体を遠心分離機にかけてウイルスの遺伝子を抽出する。次にガラスで仕切られたキャビネットの下に手を入れ、遺伝子の入った溶液と試薬を入れた検査プレートをつくる。この過程でウイルスの感染力はなくなるという。専用装置にセットしてから加熱と冷却を45回繰り返して遺伝子を増幅。遺伝子が試薬に反応し光れば陽性と判定され、一連の作業は数時間かかる。
 同保健所で1日に可能な検査は10人。多い日は12、3人分の検体を扱ってきたが、全て陽性になるトラブルが起きたのはこの日が初めてだった。
「結果の正確性が疑われる事象が起きた」として翌日の4月21日から検査を中止。道立衛生研究所の職員2人が立ち会い、作業手順や試薬など考えられる原因を一つひとつ検証していくと、1階検査室の換気設備が何年間も前から機能していなかったことが分かった。
 

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