指定感染症故のジレンマ。コロナ対策最前線の葛藤
軽症者が自宅療養できるスキームを

2020年4月号

市民や医療機関からの多くの問い合わせに対応している古澤医師(2月28日、札幌市保健所で)

札幌市保健所感染症総合対策課 古澤弥医師

感染拡大に伴い、陽性患者を受け入れる市立札幌病院は事実上パンク状態。一方、感染を判定するPCR検査は重症者の確定診断を優先させる方針から「希望しても受けられない」など市民の不満が日増しに募っている。それらを調整する現場の最前線にいるひとりが札幌市保健所感染症総合対策課の古澤弥医師だ。道内の社会と経済に著しくブレーキをかけた新型コロナウイルスの猛威に、限られた人員で対応している同保健所対策チームの現状を取材した。(3月5日最終取材)
 

陽性患者は全員入院措置で市立札幌病院はパンク状態

 
【札幌市において新型コロナウイルスの検査依頼を精査すると共に、市民や医療機関の問い合わせ窓口にもなっている札幌市保健所。その現場はどうなっているのか】

 古澤 通常は私と感染症担当部長の山口(亮氏)の医師2名体制で感染症対策業務を担当しているのですが、今回の新型コロナウイルスに関しては、札幌市のほかの部署に籍を置く医師職、2名ほどにも応援に来てもらっています。ですが4名常駐ではありません。保健所で医療機関からの相談を受け付ける医師が不在にならないよう、山口や私がいない場合などに対応してもらっている格好です。
 現時点(3月5日現在)で新型コロナウイルスの感染を確認するPCR検査を行なえるのは、北海道立衛生研究所と札幌市衛生研究所の公的機関2カ所のみ。そのうち我々は市の所管である札幌市衛生研究所に検査を依頼しています。

 ──市民からの問い合わせ対応については。

 古澤 札幌市新型コロナウイルス一般電話相談窓口(TEL011・632・4567)で相談を受け付けています。現在6回線で対応していますが、ほぼいつも埋まっている状況です。

 ──今回の新型コロナに対処する体制ができたのはいつ頃ですか。

 古澤 2月上旬頃には整備できました。

【指定感染症とされた新型コロナウイルス感染症を受け入れられる病床があるのは、札幌市では原則として市立札幌病院のみだ。だが同病院の感染症病床は8床。日々刻刻と感染者が増えていく中、受け入れ体制の強化は喫緊の課題になっている】

 古澤 現状、この感染症で陽性と診断された方には隔離や経過観察の必要もあることから重症・軽症問わず全員入院措置が取られています。しかし正直なところ市立札幌病院はパンク状態。札幌市以外の感染症病床を持つ医療機関にも対応をお願いしているというのが実情です。
 

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