姿形をめぐり関係者の間で物議を醸している新シャクシャイン像(新ひだか町の真歌公園)
シャクシャイン顕彰会の土肥伸治会長に訊く
かつてのアイヌ民族の英傑、シャクシャインを顕彰した像を2018年の秋、新ひだか町(大野克之町長)が解体撤去し、NPO法人新ひだかアイヌ協会(大川勝会長)が新しい像を建立した問題の続報だ。先月号では役場や同協会関係者への取材を通し、長年にわたって主体性を欠いた町の動きが関係者の軋轢を深めたことを主にレポートした。だが、役場や同協会側の釈明にシャクシャイン顕彰会の土肥伸治会長は黙っていない。11月下旬、記者は本人を直撃しインタビューを試みた。問題の本質は果たしてどこにあったのか──。(本誌編集長・工藤年泰)
──先月号で報じた通り、町は50年もの間、町有財産でまちの名所でもあった旧シャクシャイン像を一度も修復や復元することなく、結果的に自らの手で葬り去りました。修復や復元できなかった理由として、町は制作者で著作権を持っていた彫刻家の竹中敏洋氏(故人)との関係がネックだったと釈明しています。曰く「傷んでいるのは分かっていたが、勝手にいじることはできないし、ブロンズ像にしたいという要望にも予算の関係で応えられなかった」と。
土肥 まず言いたいのは、あの像は「町が管理して後世に引き継ぐ」という約束の中で昭和51年に寄贈されているということ。そのような条件付きの寄贈であり町有財産だったことを自覚していない物言いに非常に憤りを感じます。
それに自分たちの手ではどうしようもなかったのなら、こちらに返せばよかった。像の所有権を顕彰会に戻してもらえば正直いくらでも手立てはありました。ブロンズ像にすることを竹中さんが求めていたのは事実ですが、彼が値段を釣り上げたような説明も事実と違う。5千万円というのは最初に出てきた数字で、最終的には2千5百万円程度になったと記憶しています。
──著作権の問題については。
土肥 竹中敏洋さんが亡くなってから著作権を引き継いだ子息の博彦さんと一緒に役場へ行ったことがあります。あれは平成28年11月のことでした。博彦さんは、著作権を500万円で町に譲りたいと申し出られたんですが、ここでも結果的に役場の回答は得られませんでした。
要は、あの像の修復、あるいはブロンズ像にするしないについても、町は当事者として全く話を進めようとしなかったということです。
本当に像の状態や今後に危機感を持っていたというのなら、なぜ私たち顕彰会に相談に来なかったのか。あれは顕彰会が竹中さんに依頼して建てたものであり、私たちと竹中さんとは密接な間柄。協議すれば解決する方法はあったはずです。
繰り返しますが、自分たちでどうしようもできないのならこちら側に所有権を戻してもらえばいいだけのこと。それもせずに「危険だから壊しました」と。こんな馬鹿な話がありますか。
──顕彰会では旧像の修復・復元について平成22年に陳情を行なっていますが、この案件がいつの間にか新ひだかアイヌ協会の新像建立事業にすり替わっていった。