“核のゴミ”レポートPART16 「文献調査」をめぐって揺れる寿都町の住民運動の現在
暴走、許すまじ──

2020年12月号

寿都湾沿いに林立する風力発電所。全国に先駆け町が運営し、成果を上げてきた。洋上風力構想を模索する過程で、“核のゴミ”処分地の「文献調査」に向けた、国やNUMOの“撒き餌”に飛びついてしまった

水産加工の担い手を中心に広がる「応募撤回」のうねり

8月13日の北海道新聞が後志管内寿都町が“核のゴミ”最終処分に向けた「文献調査」に応募を検討中であることを報じて以降、この問題は全国に大きく発信されている。片岡春雄町長の頑なな姿勢は住民の反発を招き、水産加工業者や主婦らが立ち上がり、「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」が誕生。「町議会の全員協議会の議事録の公開を」「町長だけの判断で応募できるのは法律の欠陥」「文献調査だけで20億円を支払う制度はおかしい」などと主張し、住民投票条例の直接請求や署名活動、講演会の開催などを通して運動の輪を広げてきた。水産業が盛んな寿都町を訪れ、この問題に対する「町民の会」の人たちの率直な声を聴いた。(ルポライター・滝川 康治)
 

水産加工の若手や女性が参加。小泉元首相の講演会に手応え

 
 寿都は道内でも古い歴史を持つ港町である。取材に訪れた筆者は、明治期から戦前までの写真を一冊にまとめた『寿都歴史写真集』を「道の駅」の売店で買い求めた。編著者の山本竜也さんは、こう記す。
「……約半世紀のあいだに、この町は、ニシンの豊漁によって人々を引き寄せ、不漁によって人口の流出に見舞われた。また、わずかな平地をもつだけであるが、開拓にたずさわる人がそこに現れ、鉄道誘致に失敗すると、自力での鉄道敷設に踏み切り、鉱業資源を求めて町の直下を掘る企業もやってきた。ニシンの不漁後は、船入澗を築造し、沖合漁業への転換を図った……」
 進取の気風にあふれる町として歴史を刻んできたことが伝わってきた。そんな寿都の町が突然の“核のゴミ”処分候補地問題で揺れている。
「文献調査」の応募検討が報じられてから3週間後の9月4日、水産加工業協同組合の青年部員や主婦、定年退職者ら30人ほどでつくる「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」が誕生した。
 

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「町民の会」には若手の水産加工業者や女性たちの姿が目立ち、小泉元首相の講演会の準備を進める

「裏方で若い人たちを支えたい」と話す槌谷和幸さん。定年前にUターンし、ペンションを営む

講演に訪れた小泉元首相と話し合う南波さん(右奥)(なんば・ひさし)1961年寿都町生まれ。寿都高校、東海大学広報学科を卒業後、東京都内の広告代理店に勤務。2016年父親の他界を機にUターンし、約100年前に創業した水産加工業の老舗・㈱カネキ南波商店の常務取締役を務めている

寿都ブランドの水産品「生炊きしらす佃煮」は伝統の製法で作られる(「道の駅みなとま~れ寿都」で)

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講演に訪れた小泉元首相と話し合う南波さん(右奥)(なんば・ひさし)1961年寿都町生まれ。寿都高校、東海大学広報学科を卒業後、東京都内の広告代理店に勤務。2016年父親の他界を機にUターンし、約100年前に創業した水産加工業の老舗・㈱カネキ南波商店の常務取締役を務めている

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