優生思想の罪、法廷へ(5)
「裁判所は正面から判断を」

2019年7月号

全国で初めて実名で被害を訴えた小島喜久夫さんの裁判は、提訴から丸1年を過ぎた(5月31日午後、札幌市中央区の札幌地方裁判所前)

旧優生法訴訟、仙台で請求棄却。札幌では民放が「倫理違反」疑い

各地で審理が続く旧優生保護法違憲訴訟で5月下旬、他地域に先駈けて仙台の裁判が判決に到り、優生法を憲法違反としつつ原告の請求を棄却する決定が伝えられた。2組の被害者が名乗りを挙げる北海道では地元の原告らがこれを強く批判、真っ当な被害回復が必要なことを改めて訴えた。溯って4月下旬にはいわゆる“救済法”が施行されたが、札幌では一時金申請をめぐって弁護団が地元民放の報道に抗議する事態に。提訴から1年、さまざまな問題に取り巻かれながらも、当事者たちの闘いへの意欲はなお衰えていない。(取材・文 小笠原 淳)
 

4月施行の“救済法”国の罪、代償320万円

「飽くまで裁判で闘ってきたんだから、法案にはまったく期待してないね。だいたい、なんでこんなに急いで法律つくる必要あったのさ」
 4月24日午後、札幌市北区の小島喜きくお久夫さん(78)は何度も繰り返されたであろう質問に丁寧に答え、同日に成立した“救済法”への不信感を語った。旧優生保護法下で不妊手術を強制された人たちに一律320万円の一時金を支給するその法律は、被害者の1人である小島さんに言わせれば「私らの声を無視したいいかげんなもの」だった。
 本稿記者がその声を聴いた日は、午前中すでに複数の報道機関が自宅を訪ね、法成立の瞬間をテレビ視聴する小島さんに密着していた。前夜には民放キー局のスタッフが来道、先の法への厳しい評価を語るその姿をカメラに収め、同夜のニュースで放映している。24日午後に足を運んだ本稿記者が1時間ほどで辞した後も、入れ替わりに全国紙の記者がそこを訪れていた。
「生身の身体を傷つけられて320万円って、おかしいんでないか。被害を受けた人たち、みんな裁判起こしていけばいいと思うよ」
 

慌ただしい1年を経てなお、闘いへの意欲は衰えていない(5月31日午後、札幌市内で設けられた報告会)

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市が虐待認識を否定

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3次救急に遜色ない体制で重症患者の救命率をアップ

いわゆる〝救済法〟の成立を伝えるテレビ報道の録画を再生し、厳しい表情で内容を確認する小島さん(4月24日午後、札幌市北区)

弁護団の「倫理違反」指摘に対し、STVは「事実と異なる」と否定している(札幌市中央区の札幌テレビ放送本社)

いわゆる〝救済法〟の成立を伝えるテレビ報道の録画を再生し、厳しい表情で内容を確認する小島さん(4月24日午後、札幌市北区)

弁護団の「倫理違反」指摘に対し、STVは「事実と異なる」と否定している(札幌市中央区の札幌テレビ放送本社)

慌ただしい1年を経てなお、闘いへの意欲は衰えていない(5月31日午後、札幌市内で設けられた報告会)

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