桂和商事本社が入居する第5桂和ビル(札幌市中央区)
東北以北最大の歓楽街、ススキノ。この夜の街を支えているのが200棟以上と言われる飲食店ビルとそれらに入居するテナントだ。両者の関係を考える上で見逃せない事件が起きている。不動産賃貸業大手の桂和商事(本社札幌・武賢樹社長)の貸しビルに入居していた飲食店が司直により退去を命じられたものの、あろうことか大家側が不動産侵奪罪に問われた模様だ。被害を訴えた飲食店関係者によれば、同社は道警による家宅捜索を受け、関係者が札幌地検に書類送致されているという。 (本誌編集長・工藤年泰)
この事件で道警に被害届を出したのは、エスジィ商事(本社札幌)代表の桒くわはら原弘美氏(50)だ。同社は平成29年1月4日、桂和商事との間で飲食店テナントとして賃貸借契約を締結。内容は、賃料などを月額約17万6千円として第5桂和ビル2階の一室を約2年間にわたり借り受けるものだった。「契約当時から桂和さんとはギクシャクし、以後も何かとトラブルが起きて店子としては満足できる対応ではありませんでした。遅滞した事実はあったにせよ賃料を支払う努力を続けていましたが、結果的に弊社は桂和さんから札幌地裁に提訴され、昨年(平成30年)10月1日の判決で建物を明け渡すよう言い渡されました。問題は、桂和さんが勝手に自力救済行為(※権利を侵害された者が司法手続によらず実力で権利回復をはたすこと)に踏み切ったことです。このような事案でテナントを強制的に排除できるのは、裁判所による執行しかありません」
こう話す桒原氏によれば、判決後の11月上旬、何者かによって店の看板が外され、入口の鍵が取り替えられていることを発見。同月下旬に赴いた中央署で被害を説明し、告訴の手続きを取ったという。「以後に接触した担当刑事の説明では、武社長をはじめ桂和さんの関係者を呼んで事情を訊いたところ概ね事実を認めたということでした。それで12月下旬以降に(桂和商事本社や桒原氏の店へ)総勢11名で家宅捜索に入り、1月末までに不動産侵奪罪違反の容疑で書類を札幌地検に送ったと聞かされました」