新ひだか町発・新しい「アイヌの英傑像」に噴き出す批判【その2】
シャクシャイン像の喪失を生んだ行政の怠慢と責任

2019年12月号

静内アイヌ協会が主催したシャクシャイン法要祭(10月20日、新ひだか町の真歌公園)

安易にアイヌ協会に傾斜した町役場

かつてのアイヌ民族の英傑、シャクシャインを顕彰した像を昨秋、新ひだか町(大野克之町長)が解体撤去し、新ひだかアイヌ協会(大川勝会長)が新しい像を建立した問題の続報だ。本誌報道後、日刊紙の地方版に「町内のアイヌ民族団体の間でぎくしゃくが続いている」という内容の記事が掲載された。だが問題の根底に見えてきたのは像の所有者である同町の大きな責任、そしてアイヌ協会への安易な傾斜だ。取材に役場とアイヌ協会は、どう答えたのか──。(本誌編集長・工藤年泰)
 

無為に過ぎた半世紀

 
 10月30日午前、新ひだか町役場で取材に応じたのは、米田和哉住民福祉部長、同部福祉課の渡辺浩之課長、建設部建設課(都市計画・公園グループ)の木村辰也参事の3名である。
 最初に記者は、旧シャクシャイン像が建立され町に寄贈された当時の経緯、像が有していた芸術作品としての価値やアイヌの英傑を顕彰する特別な意味、さらには観光名所として寄与してきた事実などを指摘したが、これらは「その通りで異論はない」との回答だった。
 先月号で既報のように強化プラスチック製の旧像は彫刻家の竹中敏洋氏(故人)がデザインし、昭和45年に任意団体シャクシャイン顕彰会(※当時は神谷与一会長・故人)が建立。維持や管理の問題などから同51年に当時の静内町に寄贈されている。
 だが、このシャクシャイン像は昨年に取り壊されるまで修復の手が加わることは一度もなかった。
 途中で傷みがひどくなったのを見かねた先述のシャクシャイン顕彰会(現在は土肥伸治会長、以下顕彰会)の有志たちが平成22年1月末、町役場を訪れ復元などを提案したが、その願いが届くことはなかった。顕彰会の陳情から8年後の平成30年9月20日、「倒壊の恐れがある」という理由で町が解体撤去するに至っている。「取り壊して撤去するぐらいなら、台座から切り離してこちらに渡してほしいと頼んだのですが、町の答えはノーでした」(土肥会長)
 重機によってバラバラにされた旧像は産廃扱いで最終処分場に送られた。この解体撤去作業が行なわれたのは、NPO法人新ひだかアイヌ協会(大川勝会長)が執り行なったシャクシャイン法要祭の3日前のことである。
 旧像が姿を消した真歌公園で同協会の関係者がカムイノミ(神への祈り)などを捧げた先には、自分たちが建立したばかりの新しいシャクシャイン像があったというわけだ。
 まず疑問なのは、新ひだか町としての町有財産に関する姿勢だ。ほかならぬ町自身が「地域に寄与してきた」と認める旧像を約半世紀近くにわたって朽ちるに任せてきたのはなぜなのか。
 

かつてのシャクシャイン像の姿(写真は郷内満氏の偲ぶ会で配られた冊子)

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大野克之町長

役場庁舎1階にある新ひだかアイヌ協会の事務所

お披露目された新シャクシャイン像の台座(9月23日)

像を失った台座には花が添えられた(10月20日)

大野克之町長

役場庁舎1階にある新ひだかアイヌ協会の事務所

かつてのシャクシャイン像の姿(写真は郷内満氏の偲ぶ会で配られた冊子)

お披露目された新シャクシャイン像の台座(9月23日)

像を失った台座には花が添えられた(10月20日)

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