旭川・森山病院の整形外科に着任した三好直樹医師と妹尾一誠医師に訊く
肩と肘、脊椎の専門医を得てオールラウンドな治療体制へ

森山病院における整形外科の強化を担う三好医師(右)と妹尾医師
Medical Report
旭川の社会医療法人 元生会(森山領理事長)が運営する総合病院、森山病院(稲葉雅史院長・232床)における整形外科のマンパワーが拡充し、オールラウンドな治療体制が確立されつつある。道北エリア初の整形外科の単科病院として74年前に開院した同院だが、1988年から総合病院として診療を行なうようになってからは発祥当時のイメージは薄れつつあった。そんな中で同院では2024年以降、医師の増員を進め、中でも森山病院のルーツである整形外科では今年度に3人が入職し、10人の専門医が常勤する体制が整った。今回のレポートでは、このほど旭川医科大学病院から同院に着任し、共に整形外科部長に就任した三好直樹医師(52)と妹尾一誠医師(51)を紹介する。
(4月21日取材 工藤年泰・武智敦子)

医師に選ばれる病院づくり」に心を砕く森山理事長
ルーツの診療科を大幅強化
森山病院は、森山領理事長の実父である故・森山元一医師が1952年に開院した道内初の整形外科単科病院がルーツ。その後、病院機能を拡充し88年から総合病院としての診療を開始した。本院の森山病院のほか、療養型病床を主体にリハビリを担う森山メモリアル病院も展開。グループの社会福祉法人では特別養護老人ホーム「敬生園」、養護老人ホーム「敬心園」、障害者支援施設「敬愛園」なども運営する。
そんな「森山グループ」の近年の大きなトピックが本院の引越しだ。2020年11月、JR旭川駅南口徒歩3分の忠別川右岸に位置する北彩都地区に新築移転を果たし、内科や外科、整形外科、脳神経外科、泌尿器科、眼科など18診療科体制を整備。旭川市内の民間病院では初となる形成外科と救急部も新設した。
そして22年初夏には、新病棟の隣接地に「病気にさせない、ならない」をテーマにした「旭川ウェルネスセンター」が全面開業。元生会と民間事業者が共同開発したもので、森山病院を中核施設に住居棟や健康食レストラン、メディカルフィットネスを備える。同センターのオープンによって故・元一医師が構想した「健康・医療・福祉」が三位一体となったトータルヘルスケアの提供体制が整った形だ。
新たな飛躍を遂げる森山病院で顕著なのが近年における医師の増員。24年に脳外科1人、25年には整形外科1人、内科1人の2人。この春の4月には整形外科3人、形成外科が2人、外科1人、内科1人と計7人もの医師が着任した。
中でも整形外科では今回の増員で10人の常勤体制が確立し、専門病院に引けを取らない内容になった。この春からのニューフェイスである2人の整形外科部長(三好直樹医師と妹尾一誠医師)を紹介しよう。

左端は腱板断裂を起こしている状態、中央は修復後、右端は修復後のMRI画像

(修復後)

(修復後のMRI画像)

骨粗しょう症による椎体骨折(左端と中央)、右端は空洞に骨セメントを詰める椎体形成術

骨粗しょう症による椎体骨折

空洞に骨セメントを詰める椎体形成術
左端は腱板断裂を起こしている状態、中央は修復後、右端は修復後のMRI画像
(修復後)
(修復後のMRI画像)
骨粗しょう症による椎体骨折(左端と中央)、右端は空洞に骨セメントを詰める椎体形成術
骨粗しょう症による椎体骨折
空洞に骨セメントを詰める椎体形成術
医師に選ばれる病院づくり」に心を砕く森山理事長
「腱板断裂」のスペシャリスト
肩と肘関節治療のエキスパートである三好医師は室蘭市出身。親の仕事の関係で釧路、石狩、札幌、函館で育ち、函館ラサール高校から旭川医科大学に進学した。卒業後は市立札幌病院や北見赤十字など道内の病院で診療経験を積み、その後は旭川医大の医局で肩と肘関節を中心とした診療と研究に従事してきた。「当時、旭川医大の医局には肩や肘関節の治療を行なう医師はいませんでした。気づけば20年間、大学病院で患者さんを診てきましたが、後輩医師も育ってきたので整形外科の手術ができる森山病院に赴任しました。長く携わってきた大学での診療とは役割も大きく変わってきますが、他の先生たちと協力しながら、得意分野を生かしつつ自分の次のステージとして役割を果たしていきたい」と意気込みを語る。
三好医師は、旭川医科大学の20年間で肩の腱が切れる「腱板断裂」の手術を約700症例経験。森山病院着任後もすでに4件の手術を行なっている。
腱板断裂は加齢と共に腱が弱くなり切れてしまう疾患だ。五十肩で肩が上がらなくなったと思っていたが、エコー検査やMRI検査により腱板が切れていたことが分かった人は一定の割合でいるという。
「五十肩は凍結肩(拘縮肩)とも言われ、腱が切れるという器質的な異常はないが、関節が固くなったせいで痛みを感じたり、肩が痛くて腕が上がらないなどの症状があります。これに対して腱板断裂の多くは、加齢で次第に腱が弱くなったため、すり切れるように断裂する患者さんが多い」
加齢により自然に腱が切れる人の割合は、40歳以下では数%。50代になると10~15%、60代は20~25%とされ、70代から80代になると30~50%が断裂しているとの報告もある。
診断はエコーでもできるが、手術をする場合は必ずMRI検査を行なう。「腱板断裂」は腕が上がらなかったり、動かないと訴える人もいるが、患者にとって一番辛いのは夜間痛で睡眠が取れないことだという。「痛みを訴えるので、検査をすると腱が切れていたというケースもあります」(三好医師)。
手術は、骨から剥がれた腱板を骨に縫い付ける「腱板修復術」を行なう。内視鏡手術を可能にした関節鏡が出てきたことで、腱板修復術はここ20年ほどで一気に増え、成績も安定している。ただ腱板が骨に定着するのに6週間から8週間の日数が必要なため、その間は装具で固定しなければならない。リハビリは装具が外れてから肩を動かす練習を行なう。
高齢化による脊椎疾患をカバー
脊椎外科が専門の妹尾医師は栃木県足利市出身。母の実家が旭川で子供の頃から北海道は身近な存在。土地勘があったことなどから旭川医大に進んだ。卒業後は市立札幌病院や旭川日赤、北見日赤などで研鑽を積み、福岡のせき損センターやシカゴのラッシュ・ユニバーシティでも研修を受けた。その後は旭川医科大学病院で十数年間、脊椎外科分野の診療と研究に携わってきた。
「大学病院の若手脊椎医師が逞しく育ち、より高度な脊椎医療を任せられるようになってきました。そこで今後はより患者さんと身近に接することのできる環境に身を置いて自身のスキルアップも目指したい。大学病院に在籍していた時は、もっと整形外科、特に背骨の治療を行なえる拠点病院があってもいいと思っており、その点でも森山病院はニーズがあると感じています」(妹尾医師)
妹尾医師が日常的に多く診ている加齢性疾患は、首では「頚髄症」、腰では「腰部脊椎管狭窄症」という疾患である。いずれも神経の束が圧迫され、手足あるいは臀部から足にかけて痛みしびれが生じ、歩行に支障をきたす。
一方、背骨の外傷として非常に多いものとして、骨粗しょう症により些細な外力で背骨がつぶれてしまう「椎体骨折」がある。この骨折は80歳以上の女性の2人に1人が経験している身近な疾患。原則的に紹介制での受診となる大学病院よりも、痛くなったらすぐ受診可能である市中病院で診る機会が圧倒的に多いことから、この治療をより重点的に手掛ける必要があると感じている。
骨粗しょう症で背骨を骨折した患者の治療は、主にコルセットによる保存療法と手術がある。手術もさまざまなアプローチがあり、どのような治療を選択すればより患者の疼痛軽減やリハビリによるADL日常生活動作改善に効果的かを考える。
「以前の森山病院では、この骨折の治療法についての選択肢が少なかったこともあるので、自分のスキルや経験を還元し、患者さんの役に立てればと考えています」と妹尾医師。
また以前は、高齢な場合は外科手術は無理でコルセットで様子を見るしかないと思われてきた。しかし妹尾医師は、「必ずしもそうではありません。椎体骨折形成術という医療用のセメントを骨の隙間に詰める低侵襲な手術法もあり、手術をした方がその後の早期離床とリハビリ、疼痛の緩和につながり、結果的に患者さんの早期回復に繋がるケースも多くあります。レントゲンやMRIなどで、どういうつぶれ方をしているのかを見極めながら治療法を決めていくので、高齢だから手術ができないという先入観をもたず治療を受けることが大切です」と説明する。
目指す患者の「QOL向上」
予防医学を標榜し、「健康都市旭川」の創出に挑戦する森山病院。こうした中で、三好医師と妹尾医師が着任したことは、整形外科の拠点病院であった同院の原点回帰にもつながる動きと言える。専門医として優れた技術をさらに磨きながら、新しい環境で患者と向き合う2人の医師に目指す目標について聞いた。
三好医師は、「道北地域では肩と肘を診ることのできる医者は私を含め3人しかいないので、このエリアでは自分はパイオニアだと自認しています。目標については、治療してもらってよかったと患者さんに言っていただくことです」と話す。
妹尾医師は、「大学病院在籍時は救急医療にも携わっていました。しかし当時、市内病院の救急外傷患者の受け入れ率は良くありませんでした。森山病院でも当時、整形外科医の不足などで積極的に背骨の外傷患者をスムーズに受け入れることができなかったのかもしれません。今後は当院でもできるということを示していきたい。道北は脊椎外科の医師が少ない中で治療を必要としている人が多いことも実感しており、そうした患者さんのニーズに応えていきたい」と力を込める。
整形外科医としてのやりがいについては、「医師を目指してからは、人間のクオリティ・オブ・ライフを重視した仕事をやりたいと思いました。人間は歩けなくなると気力や体力などのモチベーションも下がりやすく、健康寿命は平均寿命にくらべると10年ほど短いといわれています。整形外科医はそうした部分に貢献できる機会が多くやりがいを感じています」と妹尾医師。
医療を志す兄の姿を追い、医者になった三好医師は、「手術した患者さんは、1年くらい経つとほとんどの方が良くなります。でも私は長く経過をみたいので、負担にならないように半年から1年後に受診してもらい、その後の経過を診ています」とし、「良くなった患者さんに引き続き来てもらい、『調子がいいよ』と言われるのが何よりのやりがいです。整形外科は命にかかわることはあまりありませんが、治療によって生活の質が良くなり、患者さんが満足してくれるのが何よりの喜びです」と笑顔を見せた。
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