新時代へ再整備される南空知医療圏
岩見沢市立総合病院と北海道中央労災病院が来年4月、経営統合へ

2025年10月号

「岩見沢市新病院」(仮称)」の完成予想パース

Medical Report

岩見沢市立総合病院(484床)と独立行政法人労働者健康安全機構が運営する北海道中央労災病院(199床)が来年4月に経営統合する。統合後は現在の「岩見沢市立総合病院」での運営となるが、28年秋の新病院の開院を目指し、造成工事が開始されている。統合の背景にあるのは、施設の老朽化に加え新型コロナ後の患者受療動向の変化による厳しい病院経営だ。自治体病院として地域住民の健康を支えてきた市立総合病院、労災や職業病に積極的に対応してきた労災病院が統合される意義や今後をレポートする。

(8月18日取材 工藤年泰・武智敦子)

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誕生する新たな市立病院


 岩見沢市立総合病院は1927年に開設され、南空知医療圏の地域センター病院として高度医療や救急、小児・周産期医療などを提供してきた。しかし、現在の本館が建ってから40年以上と建物・設備の老朽化、狭隘化が問題に。一方の北海道中央労災病院は、産炭地である空知地域のじん肺患者の治療を目的に1955年に開設された「岩見沢労災病院」が前身。以来、70年にわたり地域の中核病院として機能してきた。
 老朽化した施設の建て替えを考えている医療機関は多いが、かねてからの建築資材や労務費の高騰でどう建築費をまかなうかが課題となっている。岩見沢市は将来の医療ニーズを踏まえ、5年前の2020年4月に新岩見沢市立総合病院建設基本構想を策定。単独での建て替えを計画していたが、両病院が統合するという流れは、同年2月に北海道からの論点提起を受けて動き出した。
「岩見沢市内に直線距離で約2キロの場所にある、急性期医療を担う2つの医療機関を統合してスリムにしてはとの提起でした。これを受け南空知医療圏域の人口減少下における急性期医療の維持・強化を図るには、市立総合病院と中央労災病院を統合することが最良の選択であるとの両者の共通認識のもと、21年7月に統合に係る基本合意書を締結しました。一方、20年からの新型コロナの感染拡大で患者の受診控えが進みましたが、コロナ禍が終わってからも入院・外来患者数がコロナ禍前に戻ることはなく、持続可能な医療を提供していくためには、医療従事者や医療機器などの資源をできるだけ早く集約化する必要がありました。このため、経営統合の時期を26年4月に前倒したという流れです」(市立総合病院整備担当部局)
 経営統合後は「岩見沢市立総合病院」として運営し、労災病院は26年3月31日(25年度末)で閉院。これまで取り組んできた同病院の医療機能は市立総合病院に引き継がれることになる。統合後の開院となる新病院(名称未定)の場所は、海抜も比較的高く国道に面し救急搬送や災害時にアクセスしやすい労災病院用地とした。
 新病院の敷地面積は約7万7千平方メートルで、躯体は今年11月に着工。竣工は3年後の28年9月を予定している。現病院の解体も含めた総事業費は約417億円。これまで市立総合病院は15科、労災病院は12科を標榜していたが、来年4月からは22科体制でスタートし、新病院開院後は27科とする。市立総合病院が484床、労災病院が199床だったが、358床に減床する。
「病床数はコンパクトになりますが、358床は見込まれる患者数を受け入れることができる規模です。リハビリの病棟を除く一般病棟は高い個室率となっています」(同)
 新病院にはこれまで南空知医療圏になかった「緩和ケア病棟」20室(個室)や「HCU」(高度治療室)、「SCU」(脳卒中集中治療室)を新たに設置。がんの末期患者や高度な救急医療にも対応していく。さらに、患者の紹介や相談窓口を一元化した「総合支援センター」も設けるなど患者の利便性にも配慮した。
 両病院の統合は、自治体病院として地域住民の健康を支えてきた市立総合病院、そして労災や職業病に積極的に対応しつつ地域医療も支えてきた労災病院という2つの医療機関がひとつになるということだ。
 単なる病院の統合ではなく、南空知医療圏における医療資源の再編という点でも今後が注目される。

現在の岩見沢市立総合病院

北海道中央労災病院

労災病院敷地内で造成工事が進む
(8月18日撮影)

現在の岩見沢市立総合病院

北海道中央労災病院

労災病院敷地内で造成工事が進む
(8月18日撮影)

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