脳神経外科の中村記念病院が展開する「脊椎脊髄・末梢神経・脊損センター」
腰痛・しびれ外来で幅広い疾患に最適解の治療を提供

2025年04月号

息の合ったところを見せる大竹センター長(左)と福田副センター長

左(おおたけ・やすふみ)1979年福島県出身。2007年札幌医科大学卒業後、中村記念病院に入職。脊椎脊髄・末梢神経・脊損センター長、脳神経外科部長。専門は脳神経外科全般のほか脊椎脊髄末梢神経外科。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脊髄外科学会認定医・指導医・代議員、日本脳神経外傷学会指導医・学術評議員・代議員、術中脳脊髄モニタリング認定医。46歳

右(ふくだ・まもる)1991 年札幌市出身。2016年弘前大学医学部卒業。市立函館病院での研修を経て17年中村記念病院に入職。25年3月「脊椎脊髄・末梢神経・脊損センター」副センター長。日本脳神経外科学会専門医。34歳

Medical Report

札幌の都心部に立地し、国内屈指の脳神経外科専門病院として有名な社会医療法人医仁会 中村記念病院(中村博彦理事長・院長/499床)。同病院の「脊椎脊髄・末梢神経センター」がこの3月から名称を「脊椎脊髄・末梢神経・脊損センター」(大竹安史センター長)に変更し、より幅広い診療に乗り出した。「腰痛・しびれ外来」で手足のしびれや腰、背中の痛みに悩む患者に対応するほか、若手の福田衛医師を副センター長に迎え体制を強化。大竹センター長(46)は、「当センターでは院内の脊椎・脊髄、末梢神経に精通した脳神経外科や脳神経内科、放射線科、整形外科の医師が連携し、症状に合った最適解を提供したい。しびれや腰痛などで悩む人はぜひ受診してほしい」と話している。

(2月27日取材 工藤年泰・武智敦子)

圧迫骨折した脊椎を治療するバルーンカイフォプラスティ(BKP)。写真は骨セメント注入後の椎体画像

しびれや痛みを軽減する脊髄刺激療法(SCS)。写真は埋め込んだリードと刺激装置

頼れる副センター長が就任


 欧米では脳神経外科が扱う手術の約7割が脊椎脊髄・末梢神経の病気だというが、日本では腰痛などの下肢痛で脳神経外科を受診するのはまだ一般的ではない。脳神経外科は脳の病気を主に診るというイメージが強いからだ。
 大竹センター長は「札幌市では頭部外傷に伴う脊髄損傷を受け入れる医療機関が少なく、救急隊が患者さんの搬送先に困ることが多い。中村記念病院は以前から一般的な脊椎脊髄・末梢神経疾患に加えて脊損(脊髄損傷)も診てきたので、3月から『脊損センター』の名前も加えました」と説明する。
 名称変更と同時に副センター長に就任した福田衛医師(34)は、「センターで扱う症状として脊椎に関連した四肢の痛みやしびれ、運動麻痺があります。同じような症状でも原因は多岐にわたるため、運動器としての診察に加えて中枢から末梢まで神経全体を診ることで正確な診断に力を入れています。当センターでは脳神経内科や放射線科、整形外科の医師と連携し、精度の高い医療を提供できることが強みです」と話す。
 開設して3カ月になる「腰痛・しびれ外来」は、患者がアクセスしやすいように敢えてこの名称にしたという。対象となるのは手足のしびれや痛みが続いたり、足や背中の痛みが治らない。あるいは手術や薬の服用でも症状が改善しない場合だ。
 高齢の女性患者は、足のしびれを感じ他の医療機関を受診すると腰部脊柱管狭窄症と診断されたが、痛みが取れず同センターを訪れた。診察すると腰部脊柱管狭窄症ではなく、MRI検査で首に腫瘍が見つかり、運動麻痺を伴っていたため摘出手術を行なうと症状は改善した。
「首にできた良性腫瘍が神経を圧迫し足のしびれが出ていた。そのまま放置していたら、歩けなくなるところでした。身体の所見と問診を幅広く行なうことで疾患を拾い上げることができました」(福田医師)
 圧迫骨折で一番多いのは、体重がかかる胸椎と腰椎の間で、平地での転倒や物を動かそうと力を入れただけで骨折し、「腰が痛い」と受診するケースが多い。同センターでは、骨粗しょう症による圧迫骨折に対して「バルーンカイフォプラスティ(BKP)」で治療を行なっている。BKPはバルーン(風船)状の器具と医療用の骨セメントを使用する低侵襲な治療法で、ステントを入れる「ステント式椎体形成術(VBS)」が選択されることもある。このように「腰痛・しびれ外来」では患者のライフスタイルに合った治療を行なうことができる。

圧迫骨折した脊椎を治療するバルーンカイフォプラスティ(BKP)。写真は骨セメント注入後の椎体画像

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腰部でも「くも膜下出血」


 脊髄損傷は高齢で脊椎管狭窄症を持つ人に多い。「脊椎は円柱状の神経の束である脊髄を守る形で取り囲んでいますが、高齢で脊柱管が狭くなると、ちょっとしたエネルギーがかかっただけで足腰の痛みやしびれなどを感じるようになります。放置すると寝たきりになる可能性もありますが、上手く治療すれば回復は可能です」と大竹センター長は話す。
 脊椎が折れて不安定性がある場合、少し動かすだけでも脊髄が損傷し、神経症状が悪化する可能性がある。そのような場合は手術による固定術を行なう。もうひとつ脊髄損傷の中でも増加しているのが、脊椎が骨折していないのに頸部の脊椎内の脊髄が傷ついてしまう「非骨傷頚髄損傷」だ。これは高齢の患者に多く、神経がこれ以上傷つかないよう投薬やネックカラーの装着、高圧酸素療法などの保存療法が行なわれる。
「当院の救急救命では脊髄損傷で運ばれてくる患者さんもいます。センターは院内にある脳神経内科や整形外科、放射線科をつなぐ役割も果たしているので、患者さんのメリットは大きいと思います」(福田医師)
 ハンマーで殴られたような強い頭痛で搬送された患者は数年前から足のしびれがあり、検査をすると腰部に血管奇形があることが判明。くも膜下出血は脳疾患と思われがちだが、福田医師は次のように説明する。
「くも膜は脳と脊髄を覆う3層の髄膜のうち外から2層目に当たるもので、脳から下の脊髄までを取り囲んでおり、患者さんは腰部のくも膜下から出血がありました。くも膜下出血の原因として最も多いのが脳動脈瘤ですが、稀に背中から腰にかけて出血する場合もあるということです」
 複数の診療科が連携している「腰痛・しびれ外来」について大竹センター長は、「一般的に治療後の画像診断で良くなっていると判断すると、それ以上の診療は行なわないことが多い。しかし当外来では、後遺症状への対症療法を行なうので患者さんの満足度は高いと思います」と話す。
 その後遺症への対症療法のひとつが神経に刺激を与えることでしびれや痛みを感じにくくする「脊髄刺激療法」だ。痛みの原因を取り除くことはできないが、微弱な電流を脊髄に流すことで痛みが伝わるのを弱めることができる。効くかどうは1週間程度、試験的に脊髄に刺激を与え、効果があった場合に刺激装置の植え込みを行なう。
「当院では8割以上に患者さんに効果があり、奏効率は非常に高い。高齢で脊椎の固定手術ができない場合は、一生痛みと付き合っていくことになりますが、『腰痛・しびれ外来』では、完璧に痛みはなくならないまでもQOL(生活の質)やADL(日常生活動作)といったニーズに合わせて治療をセレクトできると思います」(大竹センター長)


 大竹医師が信頼を寄せる福田医師は札幌市出身で、札幌北高を経て弘前大学医学部に進学。卒業後は市立函館病院で研修を受け、中村記念病院に入職して今年で8年目の若手だ。人の命と人生を支える仕事に就きたいと願い医者を志した福田副センター長を、大竹センター長は「エネルギッシュで行動力があり、患者さんにも真っ直ぐに向き合う頼もしい後輩」と期待し、「これまでマンパワーの面で私がセンターを離れるわけにはいきませんでしたが、後輩が育ってきたので次に進みたい」と新たな意欲を口にする。



社会医療法人医仁会
中村記念病院

札幌市中央区南1条西14丁目
☎:011-231-8555
HP:https://www.nmh.or.jp/

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