北海道BPにメディカルモールを開くミライシアHD・神山武士社長に訊く
連携と共有をキーワードにクリニックと薬局を新展開

2024年02月号

「これからの医療は業種を超えた連携がカギ」と語る神山社長

(かみやま・たけし)1981年小樽市出身。立命館慶祥高校を経て北海道薬科大学(現北海道科学大学)卒業。2006年札幌禎心会病院に薬剤師として勤務。08年小樽市でクローバー薬局を運営するメディカルファイブに入社し10年に社長に就任。19年にミライシアホールディングを創業し道内外で調剤薬局や保育事業、介護事業を展開。23年7月28日付けで釧路市内の医療法人清水桜が丘病院理事に就任。42歳

Medical Report

この夏、北海道ボールパークFビレッジ(北広島市)に開業予定のメディカルモールを手掛け、外来診療の停止に追い込まれた釧路の精神科病院の建て直しにも取り組む──。調剤薬局などを手掛けるミライシアホールディング(本社札幌)の神山武士社長(42)にとって23年は激動の年だった。そんな若き経営者が24年に掲げるキーワードは「連携」と「共有」。2019年の創業以来、地域のニーズに応える調剤薬局事業を展開しながら道内の医療格差を肌で感じてきた神山社長は、医療機関などと連携を図り地域に手厚い医療を届けることを目標に掲げる──。

(12月12日取材 工藤年泰・武智敦子)

遅れる移転計画
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医療格差の是正に尽力


 ──地域により医療に格差があることを肌で感じているのでは。
 神山
 医師をはじめとする医療人材はどうしても都市部に集まりやすい傾向があり、地方の医療はどうしても置き去りになりがちです。
 そんな中、この問題を少しでも解決していこうと2017年からスタートしたのが地域医療連携推進法人という制度で、北海道でも上川、渡島、紋別の3カ所で始まっています。
 この制度では複数の医療法人や介護事業所などが連携して法人格を持ち、それぞの独立性を保ちながら医薬品の共同購入や法人間での病床融通、医師などの人的交流を享受できることがメリット。この中で私たちが志向しているのは、薬局を出店しているエリアで医療機関と連携しながら地域を支えていく取り組みです。
 ──23年では、釧路の医療法人清水桜が丘病院が医師不足から外来停止に追い込まれ、神山社長が経営に参画しながら再建に乗り出された。
 神山
 まさに地方で医療人材の確保が難しくなっていることを痛感しました。釧路の精神科医療では、院長の高齢化による診療所の閉院が相次いだほか大学病院の医師引き上げなどが重なり強い下方圧力がかかっていた。そんな中で市内の精神科として最大の病床を持つ清水桜が丘病院の再建は待ったなしの状態でした。
 ──神山社長の尽力で8月から栃木県在住の一瀬裕太郎医師が着任し、外来が再開されたのは朗報でした。
 神山
 外来診療はまだ週に2回程度ですが、新規の患者さんも診れるようになりました。一瀬先生は30代半ばと若く精力的に診療を行なっていただいており、地域医療にやりがいを感じているようです。清水惠子院長・理事長は、患者さんの受け入れ体制をさらに整備していきたいと前向きです。

「Fビレッジ メディカルスクエア」のエントランスイメージ

調剤ロボットで患者の待ち時間を短縮

「Fビレッジ メディカルスクエア」のエントランスイメージ

調剤ロボットで患者の待ち時間を短縮

共有と連携で地域医療に貢献


 ── 北広島市の「北海道ボールパーク Fビレッジ」に高級賃貸住宅(サ高住)の「マスターズヴェラス北海道ボールパーク」が来たる6月にオープンし、その1、2階に御社のメディカルモール「Fビレッジ メディカルスクエア」が誕生します。
 神山
 メディカルモールは、医療機器搬入などの関係から8月のオープン予定です。総延床面積は約412坪で、内科、整形外科、小児科、形成外科・皮膚科、歯科の5つのクリニックと私たちの「みらいしあ薬局Fビレッジ」が入ります。
 ──斬新な薬局になりそうです。
 神山
 調剤業務をはじめとする各診療科のサポートはもちろんですが、ここでは調剤ロボットを導入し、患者さんの待ち時間を短縮させる予定です。入口には、お薬専用のロッカーを配置し、本人認証は薬局から患者さんのスマートフォンに送付するパスワードで行なうので安心です。北広島でも高齢化が進んでいますが、市内で在宅療養している人たちを薬剤師が訪問し服薬指導も行ないます。
 ──小児科や整形外科を入れた理由を聞かせてください。
 神山
 小児科の診療機関が地域に少ないということがひとつ。またボールパークには居住者のお子さんがおり、キッズパークといった遊び場や病児保育を行なっている認定子ども園もあります。こういった皆さんにも対応したいと考えました。整形外科ではスポーツ医療を専門的に診ることもできますし、リハビリ室を備えているのでアスリートや高齢者の機能回復にも対応します。
 ──5人の医師が連携する取り組みを構想されている。
 神山
 今回のコンセプトのひとつに「共有」があります。例えば、整形外科が備えるMRIを他科、例えば内科でも使えるようにしました。また同じメディカルモールにかかるのに診察券を何枚も持つのは不便なので、複数科を受診する場合も1枚で済むようにしたい。
 ──それはいいですね。
 神山
 通常のメディカルモールは建物の中に医療機関が独立して入居し、それぞれに受け付けがあります。しかし、今回はエントランスにそれぞれの受け付けを集約し、そこからクリニックに向かうようにする。LINEで予約をすれば自分の待ち時間が分かるのでスムーズに診療を受けられ、支払いは現金にも対応しますが、事前にクレジット情報を登録すると後払いのスマート決済も可能です。
 ──北広島でもニーズを踏まえて在宅医療を展開していく。
 神山
 病床数の削減方針を踏まえ早期に退院を促す流れがいっそう強まり、自宅や介護施設で療養する人は増えていくでしょう。この中でご自宅に薬剤師が訪問し服薬指導することは患者さんの心の支えにもなると思います。北広島市内の調剤薬局には無菌室がないはずなので、末期がんで自宅療養している患者さんの輸液の調剤を行なうため薬局内に無菌室を設け、こちらも薬剤師が届けるようにしたい。
 ──薬剤の在庫情報を薬局間で共有したうえで等価交換し、互いの在庫を最適化するシステム「ばくりっこ」の進捗状況はいかがですか。
 神山
 周知のように、今は全国的に薬の供給不足が課題。医薬品の製造が追いつかない中で「ここの薬局は持っている」「あちらの薬局は足りていない」という状況になっている。私たちが開発した「ばくりっこ」は、まさにそういうミスマッチ解消の一助になれると思います。
 現在、このシステムを導入しているのは北海道・東北エリアが多いですが、関西にも登録薬局があります。さらにシステムをブラッシュアップして使いやすいものにしていき、全国に広げていければいいですね。
 ──2024年の抱負を。
 神山
 まずは「Fビレッジ メディカルスクエア」を軌道に乗せること。利用者に「出来て良かった」と言ってもらえるメディカルモールにするのが大きな目標です。また24年は診療報酬や介護報酬が改訂される年でもあります。経営環境が厳しくなることを見据えながら、他の薬局はもとより、病院や訪問看護ステーション、介護施設などとの連携を強め、患者さんに手厚いサービスを提供していきたいと思います。
 ──さらなる飛躍を期待します。本日はありがとうございました。



株式会社ミライシアホールディング

札幌市中央区北2条西9丁目1番地
Wall annex301
☎:011-590-8328
HP:https://miraisia.co.jp

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