北海道整形外科記念病院のJRタワークリニック院長に安保裕之医師が着任
経験と実績に裏打ちされた外来対応で深まる病診連携

2023年08月号

本院のサテライトクリニックで新たな意欲を燃やす安保院長

(あんぼ・ひろゆき)1962年函館市出身。函館ラ・サール高校を経て旭川医科大卒。89年北大病院整形外科入局。97年北海道整形外科記念病院に赴任。2002年いとう整形外科病院副院長に就任。19年北海道整形外科記念病院診療部長となり、23年4月1日付で同院附属の「JRタワークリニック」の院長に抜擢。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本脊椎脊髄病学会指導医。60歳

Medical Report

国内有数の整形外科専門病院、医療法人 北海道整形外科記念病院(札幌市豊平区・199床、加藤貞利理事長)のサテライト診療所である「JRタワークリニック」(JRタワーオフィスプラザさっぽろ8F)の院長に4月1日付で安保裕之医師(60)が就任した。本院の診療部長だった安保医師は脊柱の専門医として数多くの手術を手掛けてきたエキスパート。同クリニックは札幌都心部に中継基地となるサテライトを設けることで患者の利便性を図ろうとしたもので、院長として外来を診ることになった安保院長は「患者さんと日々接し、保存療法で治していく治療にも新鮮さを感じています」と意欲的だ。

(6月14日取材 工藤年泰・武智敦子)

遅れる移転計画
課題山積み北海道医療大の北広島移転

厚真の砂利採取場で起きた産廃不法投棄問題を追う

江差パワハラ死問題で交渉決裂
道「因果関係」否定貫く

つしま医療福祉グループ 「ノテ幸栄の里」が新築移転
地域包括ケアの拠点として在宅生活を支援

医師同士の信頼から生まれた院内セカンドオピニオン


 北海道整形外科記念病院は、1978年に開業した国内トップレベルの整形外科専門病院(近藤真院長)。膝関節治療のパイオニアとして数多くの後進の育成に尽力した故・松野誠夫北大名誉教授が大学に勤務していた頃から設立に奔走し、退官後の95年から2014年に逝去するまで理事長を務めた。その後任として理事長に就いた加藤貞利医師は松野氏の教え子でもある。
 診療科は「上肢」(肩周辺から手指)、「下肢」(太ももから足指)「脊柱」(首から腰)、「股関節」(足の付け根)の4分野の他に「リウマチ」「スポーツ外傷・障がい」「骨粗しょう症」に細分化され、各分野に精通した4~5人の専門医が連携しながら高度なチーム医療に当たっている。
 同病院で、まず特筆すべきは「院内セカンドオピニオン」の体制が整っていることだろう。
 セカンドオピニオンとは、患者が納得のいく治療を選択できるよう病気の進行状況や治療方針について別の医療機関の医師に第2の意見を求める行為を指す。患者にとって有用な仕組みだが、他の病院を探す時間的余裕がなかったり費用がかかるなどの難点があった。
 同病院の「院内セカンドオピニオン」はその点に配慮したもので、担当医の診断に疑問を感じたら、院内の別の医師に遠慮なく診てもらうことができる。換言すれば全医師が一丸となって患者をフォローする体制がとられ、医師同士の強い信頼関係があるからこそ実践できていると言っていい。
 ここには、北海道はもとより全国から月平均6500人以上の患者が訪れる。手術数は、ここ3年ほど新型コロナの感染拡大で年間3000症例前後で推移してきたが、今年に入ってからは回復基調でコロナ禍前の3400症例ベースに戻りつつあるという。
 2010年に改築された病棟はバリアフリー化を図り、2階と4階には屋上庭園を設けるなど入院患者に快適でハイグレードな居住性を提供している。遠方から訪れる患者にも配慮し、即日検査を可能にするため3・0テスラと1・5テスラの2台のMRIを導入。全身用CTにX線テレビ装置、骨密度測定装置なども完備している。
 ハード面を充実させる一方で、人間の自然治癒力を重視した医療にも力を入れているのも大きな特徴だ。
「治療の本質は患者さんの自然治癒力をいかに引き出していくか。そのためには担当医を信頼してもらうことが何より必要です。医師との信頼関係ができた時点で患者さんには『病気を治したい』という自然治癒力が強く働きます。こうなるともう半分くらい治ったようなもの。関係者から『これだけ多くの手術を行なっているのに使っている薬剤は(他と比べ)3分の1程度だ』と驚かれることがありますが、患者さんの自然治癒力を引き出せれば、そんなに多くの薬剤は必要ないのです」(加藤理事長)

札幌市豊平区平岸にある北海道整形外科記念病院

信頼し合う加藤理事長(左)と安保院長

JRや市営地下鉄の札幌駅に直結しているJRタワー

札幌市豊平区平岸にある北海道整形外科記念病院

信頼し合う加藤理事長(左)と安保院長

JRや市営地下鉄の札幌駅に直結しているJRタワー

都心部の診療拠点である「JRタワークリニック」


 そんな北海道整形外科記念病院にとって初めてのサテライト診療所である「JRタワークリニック」(JRタワーオフィスプラザさっぽろ8F)は、5年前の2018年4月に開院。それまで運営されていた「オフィスプラザ整形外科クリニック」を同病院が継承したもので、都心部に診療拠点を設けることで患者の利便性向上を図るのが狙いだった。
 サテライト開設の事情について加藤理事長は次のように説明する。
「本院は豊平区平岸にあるため患者さんにとって交通アクセスがいいとは言えません。都心部にいわば中継拠点となるサテライトを設け、利便性の向上を図りたいという話は前理事長の松野先生の頃から出ていました。継承したオフィスプラザ整形外科クリニックの倉上親治院長(当時)は、北大時代の私の一期先輩でもあり、開設話は渡りに船でした」
 継承後は倉上医師が院長を続けていたが、この3月末で退任。これを受けて本院の診療部長であった安保裕之医師が4月1日付で同クリニックの院長に就いたという流れだ。
 その安保院長は脊柱の専門医として数多くの手術を手掛けてきたエキスパート。旭川医科大学を89年に卒業してから北大病院整形外科に入局し、97年に北海道整形外科記念病院に赴任。その後は他の整形外科病院の副院長を務めていたが、2019年に古巣に戻っていた。
「脊柱の専門医には繊細な手技が求められます。昨年還暦を迎えたこともあり、どこかで線を引かねばならないと考えていた矢先に加藤理事長からJRタワークリニックの院長にと声をかけていただきました。患者さんと接するのが好きでもあり、喜んで就任を引き受けたしだいです」と安保院長は話す。
 整形外科領域に限らず道内にサテライトの拠点を設けたいという専門病院は少なくないが、実現は容易ではない。若い医師の多くは手術を重ねて腕を磨きたいと考えており、外来中心のサテライトに赴任する人材が少ないからだ。
 この辺りの事情については、
「本院の北海道整形外科記念病院では脊柱の治療を数人のチームで行なってきました。僕より若い医師が先進的で高度な治療を行なっており皆体力もある。背骨の治療は手術だけでなく、術後の管理も大事なので、手術は若い医師に任せ僕が外来を担当するのがベストだと考えました」
 と安保院長は説明する。


本院の看板のサテライトを担う安保院長へ寄せる信頼


 安保院長の腕と人柄について加藤理事長は、
「手術を数多く手掛けてきた整形外科医だからこそ患者を診る目ができており、本当に手術が必要かどうかを判断できる。安保先生は優しい人柄ですが、芯がしっかりした医師。患者やスタッフからの評判も良く、安心して外来を任せられます」と太鼓判を押す。
 JRタワークリニックでは常勤の安保院長とともに本院から日替わりで医師が出向き専門外来を開くなど2人体制で外来対応を行なっており、3人の看護師が医師たちを支える。
 1日に40~50人の患者を診ており、都心部に勤めている人や公共交通機関を利用して千歳や滝川からやってくる患者もいる。肩腱板断裂や骨折の治療に訪れる患者が多く、ここで診察してから本院で手術するのは月平均で10人ほどだという。
 安保医師が院長に就任し2カ月が経過したが、サテライトの運営は今後どのように舵取りをしていくのか。
「手術が必要な患者さんを本院に送ることが第一だと考えています。その次がサテライトの役割でもある術後のフォローです。JRタワーという好立地で利便性は非常に高い。近隣で勤務している人たちの初期のケガや痛みに対しては注射や薬の処方で対応していますが、何より本院のバックボーンがあるのは大きい」
 外来対応については、
「今までは脊柱の手術をしてきましたが、クリニックでは全身の部位を診るようになりました。手術だけでなく保存療法で治していく治療に新鮮さを感じています。もうひとつは水先案内人的な仕事もあります。本院には股関節、下肢、上肢、脊柱、リウマチなど各分野のスペシャリストが揃っており、クリニックで高度な医療が必要と判断した患者をそれぞれの専門医に振り分けることができる。患者さんが最初から本院に行くのは場所的にハードルが高いことがありますが、ここはJR札幌駅直結なので気軽に来ていただくことができます」と前向きだ。
 とはいえ、安保院長は完全に手術を離れたわけではない。毎週水曜日には本院に勤務し、外来だけでなく手術も行なっている。
「週に一度、本院に行くことで向こうの医師とコンタクトが取れますので、本院と密に連携が図れるメリットがあります。気になる患者については、専門医に聞けばアドバイスをもらえますし、場合によっては患者を本院に送ることもあります。患者さんにとっても優れた専門医がいるのは心強いと思います」
 本院で治療した患者が経過観察を交通アクセスの便利な「JRタワークリニック」で行なうメリットもある。今年10月からは、クリニックで撮影したMRIやCT、レントゲンの画像を本院に転送することが可能になる。これまでは、画像をメディアに落としてから本院に送っていたが、今後はサテライトと本院でリアルタイムで画像を見ることができるようになる。両者における病診連携はますます深まりそうだ。
 院長に就任した安保医師に加藤理事長は次のようにコメントし、全幅の信頼を寄せている。
「当院の話ではありませんが、まれに外来で『こんな医師には診てもらいたくない』と言われる先生もいます。そういう意味でサテライトでの診療は非常に大事で、北海道整形外科記念病院の評判を左右しかねない。その点、安保先生は私たちのサテライトの責任者として、これ以上の人材はいないと考えています」







医療法人 北海道整形外科記念病院附属
JRタワークリニック

札幌市中央区北5条西2丁目
JRタワーオフィスプラザさっぽろ8F
☎:011-209-5025
HP:https://www.hokkaido-seikei-clinic.jp


遅れる移転計画
課題山積み北海道医療大の北広島移転

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