北海道BPのメディカルモールを担うミライシアホールディング
「未来と地域」を見据えたクリニックと薬局を展開

2023年06月号

調剤薬局のベンチャーとして期待されるミライシアホールディングの神山社長(本社オフィスで)

(かみやま・たけし)1981年小樽市出身。立命館慶祥高校を経て北海道薬科大学(現北海道科学大学)卒業。2006年医療法人禎心会病院に薬剤師として採用。08年に小樽市でクローバー薬局を運営するメディカルファイブに入社。10年社長に就任し、19年ミライシアホールディングを創業。41歳

Medical Report

調剤薬局事業などを手掛ける「ミライシアホールディング」(本社札幌)がいま話題の「北海道ボールパークFビレッジ」でメディカルモール事業に乗り出す。来年6月に開業するハイグレードなサ高住「マスターズヴェラス 北海道ボールパーク」に併設される「Fビレッジ メディカル スクエア」がそれで、先進的かつ地域密着型の取り組みが注目を集めそうだ。2019年の創業以来、在宅患者訪問薬剤管理指導など地域のニーズに応える調剤薬局を展開し、成功の足がかりをつかんだ同社の神山武士社長(41)に、これまでの取り組みと今回のプロジェクトの概要を訊いた。

(4月21日取材・工藤年泰)

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在宅医療に見出した活路


 ミライシアホールディング社長の神山氏は薬剤師として病院に勤務した後、2008年に小樽市内で調剤薬局を運営するメディカルファイブに入社。ここで経営改善策として、薬剤師が自宅や施設で生活する患者に医薬品を届け、服薬指導などを行なう在宅患者訪問薬剤管理指導の導入を提案。札幌市内に専用の調剤薬局をオープンさせた経歴の持ち主だ。
 この取り組みの背景には、退院後に薬の飲み忘れや飲み過ぎなどで適切な服用ができなかったり、体の状況などで薬の受け取りが難しいケースという患者側の事情があった。国は病床数の削減を目指しており、在宅医療の需要は増加が見込まれる。ただ、大手と異なり単独の薬局では薬剤師不足もあり、在宅患者訪問薬剤管理指導の実施は簡単ではない。
「それでもニーズはある」。そう踏んだ神山氏の挑戦は見事に当たった。
「当時の一般的な調剤薬局の役割は、お薬をつくって渡すところまで。しかし、国の方針の中で薬剤師には患者を支える在宅医療のチームの一員としての役割が期待されています。自宅でちゃんと服薬ができているか、飲めていないなら何が原因か。それらを情報収集して飲みやすい薬に替える。さらには患者さんの状態を医師やケアマネージャーなどにフィードバックし、QOLの改善につなげることもできます」(神山氏)
 この成功を踏まえて2010年には同社の社長に抜擢され、19年には「地域のニーズに応える調剤薬局」を目指し「ミライシアホールディング」を設立。メディカルファイブを傘下に置くとともに各地域に合ったサービスを提供していこうと、M&Aにより傘下の調剤薬局を増やしていった。現在では保育事業を含めてグループ企業は9社にのぼる。
「札幌では医師や訪問看護師など在宅医療に必要なスタッフを揃えることが比較的容易ですが、地方都市では簡単ではない。そういう点からも地域ごとの会社で意思決定をした方がスピーディで細かい対応ができます。現在、傘下の調剤薬局は30店舗ですが、ノウハウの提供先を含めると全国50店舗ほどになります」(同)

Fビレッジ メディカル スクエアのエントランス(イメージ)

Fビレッジ メディカル スクエアのエントランス(イメージ)

スピーディーな処方を可能にする調剤ロボット

未来を先取りした取り組み


 本稿前段の記事で紹介したように、現在北広島市の「北海道ボールパークFビレッジ」では来年6月のオープンを目指し、ハイグレードな賃貸住宅(サ高住)「マスターズヴェラス北海道ボールパーク」(290室)の建設が進んでおり、1・2階に併設されるメディカルモールが同時開業する予定。その運営を担うのがミライシアホールディングだ。神山社長はメディカルモールがFビレッジとしてのまちづくりの一環であることを知り、「地域に根差した調剤薬局づくりに取り組んできたからこそできる」と、名乗りを挙げたという。
 そのメディカルモール「Fビレッジ メディカル スクエア」に開設されるのは内科、整形外科、小児科、形成外科・皮膚科、歯科の5つのクリニックと同社の調剤薬局「みらいしあ薬局Fビレッジ」。球場で選手がケガをした際やマスターズヴェラスなどの入居者の内科的ケアはもとより、北広島市内に小児科が少ない地域事情に鑑み同科を誘致。Fビレッジ内にある認定こども園に通う子どもたちの急病やケガにも素早く対応できるよう配慮した。
 今回の「みらいしあ薬局Fビレッジ」でも先の在宅患者訪問薬剤管理指導で在宅医療に貢献する方針だが、スマートで先進的な取り組みにも注目が集まる。
 そのひとつが北海道では初とされるドイツ製の調剤ロボットの導入だ。通常、薬局には2500~3000種類の薬剤がストックされており、処方の際はその中から薬剤師が1つひとつ選び出さなければならない。だが、調剤ロボットに処方箋の情報を入力すると、わずか10秒ほどで薬をピックアップ。これにより省力化と待ち時間の短縮が可能になる。
 またOTC医薬品(薬局やドラッグストアなどで買える市販薬)は、デジタルサイネージを通して薬剤師とやりとりすることで購入可能で、包帯や服薬ゼリーなどもここで入手できる。さらに末期がんで自宅療養している患者の輸液などの調剤を無菌状態で行なうため薬局内に「無菌調剤室」を設け、品質管理も徹底する。
 メディカルモールの入口に温度管理のできるロッカーを配置し、薬を365日24時間受け取れるサービスも提供。糖尿病の治療に使うインスリンなどのように冷蔵庫で保管しなければならないケースにも対応し、本人認証は薬局から患者のスマートフォンに送付するパスワードで行なうので安心だ。
 これらの取り組みを踏まえ神山社長は、次のように意欲を語る。
「北広島市内では自宅療養する患者様が増えており、そうした人たちにさまざまな形で私たちの薬局を利用してもらいたい。私が独立するきっかけとなったのは在宅医療であり、それらのノウハウをしっかり持っています。メディカルモールは、各開業医の負担を減らしながらできるだけローコストで運営していくことが肝要。まずはこちらでしっかり成果を出し、次の展開を考えたい」


 調剤薬局の未来を見据えるミライシアホールディングでは、医薬品ロスの問題にも取り組んでいる。
「全国の薬局で廃棄される医薬品は年間100億円を超え、経営を圧迫しています。この問題を解決すべく凸版印刷と共同開発し、昨年に特許を取得したのが自動マッチングシステム“ばくりっこ”です」(神山社長)
 北海道の方言で「交換する」という意味を持たせた「ばくりっこ」は薬局間の在庫情報をリアルタイムで共有し、等価交換して最適化するシステム。売れずに長期在庫になっている薬剤を必要としている薬局に融通することで廃棄を減らす仕組みだ。今年は、この「ばくりっこ」を全国2500の社外薬局に導入していくことを計画している。
「大手では自社の中で融通し合えるので問題はありません。しかし、全国にある約6万の薬局のうち大手は2割程度。残りの店舗は個店なので、どうしても薬剤の廃棄が多くなります。そのような皆さんに“ばくりっこ”を役立ててもらいたい」(同)
 社名は「未来」と「しあわせ」をかけ合わせた「ミライシア」。今回の取材を通して「未来をしあわせに」という同社の理念が伝わってきた。



株式会社 ミライシアホールディング
札幌市中央区北2条西9丁目1番地丁目1番地 Wall annex301
☎:011-590-8328
HP:https://miraisia.co.jp

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