培った“ホスピスのこころ”を森に囲まれた新病院で具現化
終末期ケアに取り組んできた札幌南徳洲会病院が移転オープン

2021年09月号

スタッフとともに新築移転の夢を実現させた四十坊院長

(しじゅうぼう・かつや)1963 年生まれ。2000 年旭川医科大学卒。札幌徳洲会病院、虎の門病院を経て08 年札幌南徳洲会病院(当時は札幌南青洲病院)に赴任。2010 年6月院長就任。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本緩和医療学会認定医、日本プライマリケア学会認定医。57 歳

Medical Report

医療法人徳洲会(大阪市北区)が運営する札幌南徳洲会病院(四十坊克也院長・88 床)が7月5日、これまでの清田区里塚から同区平岡に新築移転オープンした。終末期のがん患者に寄り添った医療を強化するため、緩和ケア病棟のベッド数を18 床から40 床に増床。徳洲会グループの理念「生命(いのち)だけは平等だ」と同院の掲げる「ホスピスのこころを大切にする病院」を融合し、コミュニケーションを重視した施設づくりを目指す。「ハード、ソフトを含め日本一のホスピスと言ってもらえる病院にしたい」と意気込む四十坊院長にこれまでの歩みや今後の展望を訊いた。(7月26 日取材)

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森の中に佇む“癒しの病院”

 
 札幌南徳洲会病院は、清田区里塚にあった旧病院から約2キロ、同区平岡地区の「シュヴァービングの森」と呼ばれる豊かな緑地帯の傍らにある。
 敷地面積1万106㎡の上に建つ新病院はRC造3階建てで、延床面積7167㎡。1階に外来と救急治療室。2階に内科病棟と透析室、リハビリテーション室。最上階3階に緩和ケア病棟が配置されている。
 窓を大きくレイアウトし、森の雰囲気を取り入れるよう配慮した空間設計が特徴で、瀟洒で洗練された印象の建物は、病院というより避暑地のホテルのようなイメージだ。
 1階の正面玄関左側にはグランドピアノを備えた多目的スペース、「シュヴァービング広場」がある。窓越しに望む静かな森の佇まいは、文字通り森の中の病院という雰囲気。四季折々の自然の姿を楽しむことができる同広場は外来の待合室としても利用されている。
 四十坊克也院長は新病院の設計について「入院する時は患者さんや家族は何かと緊張しておられるもの。それを少しでも払拭するためにも居心地のいい空間をつくりたかった」と狙いを語る。
 病床数は旧病院と同じ88床だが、今回の移転を機に病床再編を行なった。緩和ケア病床を18床から40床に倍増し、3階東棟と西棟に各20床ずつ配置。病室のほとんどを個室とし、全ての部屋にトイレとサンルームを設けた。神経難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)やパーキンソン病、慢性疾患の患者を受け入れる一般病床(障害者病棟)は以前の70床から48床になった。
 また需要の増加に応じて人工透析のベッドを18から25に拡充し、土地の起伏を生かして外来の玄関とは別に透析患者専用の玄関を2階に設けてダブルアプローチを実現。1階には外来から入院、居宅サービスなどに関する問い合わせを受け付ける相談コーナーも設けた。
 リハビリ室のある2階には、患者が花や野菜を育てたり散歩や歩行訓練などができる「ひだまりテラス」を開設。内科病棟のナースステーションの横にはテレビを視聴できるコミュニケーションコーナーもある。開放感のある吹き抜けとなっているナースステーションでは、車椅子の患者とのコミュニケーションに配慮し、カウンターの高さを低くしたのも印象的だ。
 2階と3階の病棟入口付近ではシュヴァービングの光と風をテーマに設置した大きな壁画が目を引く。これは愛知県がんセンター病院精神腫瘍科部部長、小森康永医師の妻である日本画家・土井彩華氏の作品を転写したもの。札幌南徳洲会病院総長でNPO法人「ホスピスのこころ研究所」の理事長を務める前野宏医師が、同NPO主催の連続講演会に小森医師を招いた縁で今回の院内掲示が実現した。
 新病院では壁画以外にも患者の心を癒すために、さまざまなアート作品を院内に取り入れており、1階の正面玄関にある透き通ったガラスの中を水が流れ落ちるアクアウォールもそのひとつ。医療機器の面ではCTを64列タイプの機器に更新。骨折など整形疾患の患者に対応するため1・5テスラのМRIも導入した。
「新病院は徳洲会グループと当院の理念を融合し、ホスピタリティ(おもてなし)、ヒーリング(癒し)、ホープ(希望)の3つのHを提供していきます。ハード面ソフト面を含め日本一のホスピスといってもらえるような施設を目指したい」と四十坊院長は意欲を口にする。
 移転新築に伴い、敷地内には以前白石区にあった「ホームケアクリニック札幌」と「緩和ケア訪問看護ステーション札幌」を集約した施設も近くオープンする予定だ。これらの2施設は、札幌南徳洲会病院と連携する在宅緩和ケアの拠点であり、「病棟の患者で在宅に移行する人がいれば対応できるメリットがある」と四十坊院長は期待する。
 

受付ロビーを兼ねた多目的スペース「シュヴァービング広場」(1階)

サンルームとトイレを備えた緩和ケア病棟の個室。トイレにはベッドごと移動できるようになっている(3階)

ニーズに応え透析ベッドの拡充を図った(2階)

敷地内にはまもなく「ホームケアクリニック札幌」と「緩和ケア訪問看護ステーション札幌」がオープン予定だ

受付ロビーを兼ねた多目的スペース「シュヴァービング広場」(1階)

サンルームとトイレを備えた緩和ケア病棟の個室。トイレにはベッドごと移動できるようになっている(3階)

ニーズに応え透析ベッドの拡充を図った(2階)

敷地内にはまもなく「ホームケアクリニック札幌」と「緩和ケア訪問看護ステーション札幌」がオープン予定だ

 
終末期医療の拠点として

 
 ここで札幌南徳洲会病院の歴史に少し触れておこう。同病院はに清田区里塚に開院した「札幌医療生活協同組合」がそのルーツ。1996年に徳洲会グループに加わり「札幌南青洲病院」となったが、赤字経営で毎年院長が変わるなど厳しい運営が続いた。
 2001年に緩和ケアと総合診療を柱とする運営に切り替え、03年11月に徳洲会グループとして初の緩和ケア病棟を開設。17年に医療生協から医療法人徳洲会へ正式に事業が譲渡され、名称が現在の札幌南徳洲会病院に変更された。
 ただ、大きな節目となった2003年の緩和ケア病棟開設をめぐっては困難もあった。当時は、急性期医療を主体とする徳洲会グループにとって終末期医療は馴染みが薄く反対の声も少なくなかった。この中で実現にこぎつけたのは、現在名誉理事長である徳田虎雄氏の当時の後押しがあったからだという。以後、一部で増改築にも取り組んだが、30年以上を経て老朽化が進み、雨漏りなどに悩まされるようになっていた。
 四十坊院長は旭川医科大学を卒業後、札幌徳洲会病院、虎の門病院を経て13年前に札幌南徳洲会病院に赴任。2010年に院長に就任してからは、新病院の建設に向け職員と一丸になって取り組んできた。
「我々のような小規模な病院の新築移転には困難が伴うことは分かっていましたが、どうしても実現したかった。徳田先生の『夢は語らないと始まらない。院長は常に夢、希望、ロマンを語るんだ』という言葉が励みになりました」
 院長として4年目を迎えた時に土地が見つかり購入。移転新築が現実味を帯びてきたのは2017年に事業が徳洲会に完全に移管され、札幌南徳洲会病院として再スタートしてからのこと。設計会社が決まり、森という周囲の自然環境を最大限に生かした病院の基本設計が示された。
 診療科目は緩和ケア内科と内科の他に消化器内科、呼吸器内科、腎臓内科、循環器内科、糖尿病内科、リハビリテーション科、漢方内科を標榜。患者は70代から80代の高齢者が多く、四十坊院長を含め8人の常勤医と70人の看護師らが患者のケアにあたっている。また同病院は徳洲会グループの一員として、いわゆる「病病連携」にも寄与している。
「道内では札幌徳洲会病院や札幌東徳洲会病院に代表されるように、徳洲会グループは急性期の患者を多く受け入れています。ただ、急性期治療主体の病院では患者は比較的短期間で退院しなければなりません。転院するか施設に入るか、在宅療養かで調整が必要になるわけです。当院は緩和ケアの他に慢性期の医療にも取り組んでおり、徳洲会グループから看取りを視野に入れた患者や慢性期の患者を受け入れることもあります」(四十坊院長)
 

最後まで患者に寄り添う

 
 40床ある緩和ケア病棟は、がん患者が中心だが、積極的な治療は行なわずペインコントロールで痛みを取り除きながら心身のケアを行なう。残された時間をいかに自分らしく過ごしてもらうか。そのために医師や緩和ケア認定看護師、ソーシャルワーカーが一丸となってケアと相談に当たっている。
「体と心は密接な関係にあり、死に対してどう向き合うかは人によって違います。中には余命を受け入れることができない人もおり、そういう患者さんに死を受け入れなさいとか、こうすべきだというお膳立ては避けたい。逆に変に患者さんに期待を持たせたり、ぐらつかせるような言動も避けるべきです。人が死を認めることができないのは、仕方がないことなのです」(四十坊院長)
 例えば、がんの症状が進行し腹水が溜まった患者が「明日旅行に出たい」と言い出したらどう対応するか。もちろん、行かせることはできないが、なぜそのようなことを考えるのか裏にある意味をスタッフ皆で考える。余命わずかの患者をどう支えるかについては、急性期治療のような答えはない。「もうすぐ死ぬんですね」と患者に言われても「そんな事はありません」と否定することはできない。
「だからこそ医師をはじめとした医療スタッフは、嘘をつかずに常に正直に患者さんに寄り添うことが大事です。これは多くの患者さんたちから教わったことでもあります」と四十坊院長は言う。
 新病院の今後については、増床した緩和ケア病棟をどう運営していくかが鍵になる。「そこについては、皆で相談しながら取り組めば必ずいい結果が生まれてくると確信しています。私はそれ以外の領域も少し広げていきたい。これから高齢化はますます進み認知症も増えていく。そういった患者さんをどう支えていくかが大きな課題になっている。今後は、認知症の診療や在宅の訪問診療を充実させていくことも不可欠だと考えています。地域包括ケアシステムの一翼を担う医療機関としてより良いケアを提供し、この病院に来てよかったと思ってもらえる病院に育てていきたい。病院というハードはできました。後は私たちが培ってきた『ホスピスのこころ』をどのように、そこに入れていくかです」
 取材の最後に、四十坊院長は将来を見据えた言葉で締めくくった。
 


医療法人徳洲会 札幌南徳洲会病院
札幌市清田区平岡5条1丁目5-1
TEL:011-883-0602
URL:http://sapporominami.com/

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