教育と研究、医療と福祉を融合。道内初の複合施設が月寒に誕生
つしま医療福祉Gの対馬徳昭代表に日本医療大学の移転オープンを訊く
姿を現した日本医療大学月寒本キャンパス(札幌市豊平区月寒東3条11丁目)
全国に先駆けて地域包括ケアシステムを実践してきた「つしま医療福祉グループ」(対馬徳昭代表・本部札幌)。その傘下の日本医療大学(太田誠学長)が清田区と恵庭市のキャンパスを豊平区月寒東に統合し新築移転。この4月から「月寒本キャンパス」としてオープンの運びとなっている。学内には同大認知症研究所、敷地内には日本医療大学病院、介護老人保健施設などが併設され、大学での学びと研究を医療福祉にリンク。学生は医療と福祉の実際の現場で実習やチーム医療を修得するなど複合施設ならではのメリットがある。同グループゆかりの地、月寒での新たな挑戦に意気込む対馬代表に事業の全容と今後の目標を訊いた。
時代の要請を先読み
日本の高齢者福祉を牽引してきた対馬代表
(つしま・のりあき)1953年美唄市出身。83年札幌栄寿会(現ノテ福祉会)設立し翌年、豊平区に特別養護老人ホーム「幸栄の里」を開設。創業時から在宅サービスに取り組み、日本初の株式会社による在宅介護サービスの提供や「夜間対応型訪問介護「」定期巡回・随時対応型訪問介護・看護」サービスを開発し国の制度として普及させた。2014年清田区のアンデルセン福祉村に日本医療大学を開学。16年学内に認知症研究所を開設。同年10月に1億総活躍国民会議の民間議員に選出。一般財団法人つしま医療福祉研究財団会長、一般社団法人日本認知ケア学会評議員、厚労省の社会保障審議会(福祉部会)委員など公職多数。つしま医療福祉グループ代表、社会福祉法人ノテ福祉会理事長、学校法人日本医療大学理事長。68歳
これからベッドが置かれる看護学科の実習室は奥行き90mの広さを誇る
コロナ禍で奮闘する職員にインスタントラーメンを寄贈(2020年5月7日)
日本の高齢者福祉を牽引してきた対馬代表
(つしま・のりあき)1953年美唄市出身。83年札幌栄寿会(現ノテ福祉会)設立し翌年、豊平区に特別養護老人ホーム「幸栄の里」を開設。創業時から在宅サービスに取り組み、日本初の株式会社による在宅介護サービスの提供や「夜間対応型訪問介護「」定期巡回・随時対応型訪問介護・看護」サービスを開発し国の制度として普及させた。2014年清田区のアンデルセン福祉村に日本医療大学を開学。16年学内に認知症研究所を開設。同年10月に1億総活躍国民会議の民間議員に選出。一般財団法人つしま医療福祉研究財団会長、一般社団法人日本認知ケア学会評議員、厚労省の社会保障審議会(福祉部会)委員など公職多数。つしま医療福祉グループ代表、社会福祉法人ノテ福祉会理事長、学校法人日本医療大学理事長。68歳
これからベッドが置かれる看護学科の実習室は奥行き90mの広さを誇る
コロナ禍で奮闘する職員にインスタントラーメンを寄贈(2020年5月7日)
全て自前でできる強み
──今回のキャンパス統合に合わせて日本医療大学病院も移転新築し、高齢者施設も整備される。相乗効果が期待できそうです。
対馬 敷地内には日本医療大学病院と介護老人保健施設「日本医療大学リハビリ」も移転します。病床は92床で、一般内科、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、リハビリテーション内科を標榜し、良質な治療とケアを提供すると同時に専門外来「もの忘れ内科」も新設します。
老健施設は居室80室で、主に病院を退院した患者のリハビリを行ないます。たとえ車いすに乗っていても調理や着替えなど自立した自分らしい生活を送れるようリハビリの拠点とし、看護小規模多機能型居宅介護事業所も併設し、看護を学ぶ学生の実習の場としても活用します。
──従来からある日本医療大学認知症研究所も機能を強化する。
対馬 先述のノテ福祉会が運営する札幌市内の事業所には全体で約2000人の在宅の利用者がおり、その8割が認知症です。もちろん病院には認知症を専門とする医師が在籍し、大学には研究機関の機能があるわけですが、認知症の臨床研究にあたっては、こうした利用者の方々からの協力を仰ぐことができます。今後は、他大学ともタイアップして本格的に認知症の治療、研究に取り組む計画です。当グループにはフィールドワークの対象となる多くの高齢者がおられるので、他の大学との連携の意義は大きいと考えています。
──医療、福祉、教育、研究がひとつのエリアに集約する複合施設は珍しい。
対馬 少なくとも道内では初めての試み。看護、放射線部門、リハビリ分野でも日本医療大学病院の患者データをチーム医療やカンファレンスにおいてストレートに役立たせることができる。他の医療機関からデータをもらってケーススタディするのではなく、全て自前でできる強みがあります。
──創業の地である月寒での大事業に感慨もひとしおなのでは。
対馬 大学卒業後、札幌トヨペットに就職したのも月寒。妻と福祉事業を始めたのも月寒でした。大学が移転する現地は大通駅から地下鉄で12分と利便性が良いだけでなく、八紘学園の農地が広がり昔ながらの牧歌的な風景が残る最高の立地です。地元の方々も喜んでくださり、連合町内会を挙げて歓迎したいという話もいただいています。
──従来から大学の前身である専門学校で教育事業も手掛け、医療・介護人材の確保に取り組んできた。
対馬 我々のミッションの第一義は学生を必要とされる社会、現場に送り出すことです。特に地方は医療スタッフが不足しています。もちろん我々グループの一員として一緒に働いてくれる人も大歓迎ですが、まずは人材を地元にお返ししたい。
──大学の総長は札幌医科大学の元理事長・学長の島本和明先生ですが、島本先生は高血圧の治療でも有名です。
対馬 島本先生には外来診療もお願いする予定です。高血圧の治療で日本一とされるドクターに診てもらいたいという人は当グループの利用者にもたくさんいるので専門外来をつくりたい。また大学の太田誠学長は大学に移行する前に運営していた日本福祉リハビリテーション学院の学院長で、大学移行後は学科長から学長に就任しました。太田学長は、北海道理学療法士会と北海道リハビリテーション専門職協会の会長を務めており、日本理学療法士協会の監事でもあります。
全国展開へ、目標は医学部開設
──江別市が2017年3月に策定した「江別市生涯活躍のまち(CCRC)」のプロポーザルで貴グループが選ばれましたが、進捗状況は。
対馬 採択されたのは18年8月で当グループは45億円を投資し事業を進めています。アメリカでは、各州の大学のあるまちに現役をリタイアした方が大学院に通って学んだり、自分の好きな講義を聴講する人が多い。大学を中心とした高齢者住宅の街が出来上がり、地方の人口減に歯止めをかける役割を果たしています。これがアメリカ版CCRCです。日本政府はこれに注目し、日本版CCRCを推進する方針を決定しました。江別市は4つの私立大学がある文教都市なので、これらの大学と連携しながら事業を進めています。
──ハード面での内容は。
対馬 市内大麻元町地区にある約3・2ヘクタールの敷地に高齢者や障害者の施設、住宅のほかレストランや温泉施設、ふぐ養殖場、交流農園、パークゴルフ場を整備し、多世代が交流、共生できる拠点づくりを目指します。4月には障害者のグループホーム、就労継続支援A型事業所がオープンし、障害者がレストランやパン工房、温泉施設で働きます。7月には企業内保育所や特別養護老人ホームが、8月には介護老人保健施設、9月にはサービス付き高齢者向け住宅がそれぞれオープンする予定です。目下、共生のまちづくりを着々と進めているところです。
──他都市での実績などは。
対馬 金沢市などが先進モデルとして知られています。ただ、市民が生涯にわたり地元に暮らせるまちづくりを目指す江別市の事業は規模が最大。地元の大学とのさまざまなコラボも初めてです。江別に住む子どもたちや若者、高齢者、障害者、外国人の皆さんがひとつのコミュニティで共生していく。温泉施設を整備し、障害者が焼いたパンや江別産の小麦を使ったうどんを食べてもらう。ふぐの養殖にも乗り出すので、ふるさと納税の返礼品に使ってもらいたいですね。
──対馬代表は1億総活躍国民会議の民間議員でもあり、長年にわたり厚労省にも政策提言をされてきた。国も貴グループが始めた地域包括ケアシステムをモデルとして介護福祉政策に取り組んでいます。
対馬 つくり上げた地域包括ケアシステムを宮城県仙台市でも実証するつもりです。すでに仙台ではノテ福祉会を母体に特養や老健、グループホームのほかに小規模多機能型居宅介護事業所も展開しています。また千葉県船橋市など関東でも同様に力を入れます。現在、船橋では特養の工事を行なっており、来年4月のオープンを予定。ほかにも神奈川県から打診されています。
──今後の目標は。
対馬 今回のコロナ禍では医師不足が露呈し、医育大学の必要性をあらためて感じています。働き方改革でも医師の労働時間が問題になり、特に北海道は厳しい状況です。医学部の開設は確かにハードルは高い。しかし、北海道に私立の医学部がないという現状にも思いをめぐらせています。医学部開設は、つしま医療福祉グループの最終目標と言ってもいいかもしれません。
──これからもフロンティアであることを期待します。本日はありがとうございました。
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