地下鉄大通駅構内のドラッグストアやコンビニでは軒並みマスクが売り切れ(2月5日撮影)
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過度に心配せず手洗いや咳エチケットの徹底を
発生地とされる中国では感染者が2月6日時点で3万人を超え、猛威を振るっている新型コロナウイルスによる肺炎。未だにワクチンが未開発ということも不安や恐怖を煽る要因になっていると見られる。だが、はじめに触れておくと決して治療できない病気ではないようだ。新型肺炎の対処法や予防策などを札幌市保健所・感染症総合対策課の古澤弥(わたる)医師に訊ねた。
最初に対処法。新型肺炎に罹患してしまった場合には、まずは対症療法を行なうとのこと。例えば熱が出たら冷まし、息苦しくなる咳が出たら酸素吸入するといった具合だ。
回復の鍵となるのは人に備わった免疫力。古澤医師は「風邪が治るのと同じように、新型肺炎も軽症のまま身体の免疫で治ってしまうことはあると思います」と話す。
だが中国ではすでに600人を超える死者が出ている。死に至る可能性も否定できない重症化について同医師は「重症化する明確な原因はいまだに分かっていない」とした上で、
「武漢市で発症した患者の症例をまとめた資料によると、重症化して亡くなられたケースは比較的高齢の方や基礎疾患、つまり元々別の病気を患っていた方が多いようです。そうした傾向は新型肺炎に限らずインフルエンザでも同様の傾向が見られます」と解説する。
では実際に発症してしまったら、治療に当たる医療機関は限定されてしまうのか。
「まず入院を必要とするような症状の場合、新型肺炎は指定感染症になっていますので特定の医療機関でなければ対応できないことになっています。その医療機関は札幌市では市立札幌病院(※病床数672床のうち感染症病床は8床)のみ。仮に今後多くの患者が出た場合は、ほかの医療機関との連携や市外の指定医療機関の協力を仰ぐことになるでしょう」
一方、軽い症状の場合はどうすべきか。
「今のところ特定の医療機関を示していないこともありますが、どの病院でも治療は可能です」
とはいえ、そもそも新型肺炎の診断には大きなハードルがある。症状だけでは風邪やインフルエンザと区別するのは難しく、調べるにはウイルスの遺伝子成分を検出して特定するPCR検査が必要となる。この検査が可能なのは、道内では北海道立衛生研究所と札幌市衛生研究所の2カ所のみだ。
覚えておきたいのは希望しても誰もが検査できるものではないということ。検査対象者は現時点での厚生労働省の定めで37.5度以上の発熱と咳など呼吸器症状があり、かつ2週間以内に湖北省に渡航、あるいは2週間以内に湖北省に滞在歴がある人と濃厚接触(※衣食住を共にしたり2m以内の会話などを指す)した人に限られている。
古澤医師は予防策については手洗い、広がりを防ぐには飛沫感染を抑制する咳エチケットの励行を挙げ、市内の至る所でポスター告知もしているという。
ただそのポスター。市営地下鉄・大通駅構内のデジタルサイネージでは目立っていたが、さっぽろ雪まつり会場に掲示されたものをはじめ紙による貼り出し物は、いささか心許ない小ささ。また咳エチケットに励もうにも、肝心のマスクなどは世界規模で品薄という。どうやらここは、まずは冷静になることが大事なようだ。(髙橋貴充)